■移ろう時の中で
穀雨のころ。内谷・春日神社太々神楽。葉桜の境内に人が集う。ハレの気配。控えめだけど上気の賑わい。久しぶりに会う人同士のあいさつの輪。
お社の前で会った鴨田清一さんと話していたら、神事で奉納する神楽が始まる。すると「お、舞ってるの、うちの孫だな」と。「内谷も若い人が少なくなって、神楽保存会も大変なんだぞ」と言いながら、舞う孫を見るのはうれしそう。
4年ぶりに、福島大学・岩崎由美子先生とゼミの学生も参加。学生たちは神事での正座は、かなりキツそうだったけど、神楽を見たり、お振舞いを食べたりしながら内谷の人や訪れた人たちと交流。内谷の人たちも「また学生たちが来てくれた。若い彼らが来ると皆が元気になる」と歓迎。感染症で中断したけど、それ以前の5年ほどの間に築いた関係はなくなっていない。その深度と密度はすごい。
明治15年(1882)の最初の奉納から100年目の昭和57年(1982)に内谷春日神社太々神楽保存会ができる。神楽の伝承は氏子の男子との決まりごとも、今は国見町全域の子どもにまで広げる。今日も、保存会の人たちから教わった子どもたちが、氏子たちが山から切り出した木で建てた神楽殿で舞う、奏でる。
歴史は、移ろう時の中で、真髄は不変だけれど、その時々の状況に、その時代の人たちの思いと知恵を加えて、アップデートされながら受け継がれていくものなのかもしれない。人が、とてもしなやかで、たくましいように。
引地真
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