■優しさの心持ち
「もうちょっと低めに。キャッチャーは座ってるから」。「あ、いいっスねぇ、そんな感じ」。人生初の始球式に向けた当日の付け焼刃的な練習が始まる。
会場に着くや否や、高橋博会長や役員の皆さんを始め、お父さん、お母さんたちにあいさつしながら、それとなく「初めて感」を伝える。と、伊藤隆道さんが「練習しますか?」と誘ってくれる。神、降臨だよ、ホントに。僕、心の中で拝みましたもの、伊藤様って。
あれは5月下旬。生涯学習課長が「始球式8:30~」と黒々と大書した付せんを貼った案内状を持ってくる。そして言う、事務的に。「国見ソフトボールスポーツ少年団長杯の始球式で投げてください、と町長に伝えてほしいと言われたので伝えます」と。この大会はソフトボールスポーツ少年団のお父さん、お母さんたちの手作りの大会で、県北地区からたくさんの子どもたちが参戦。昨年、感動した大会だから今年も行こうとしてたけど、ナニ?始球式?僕、投げるの?教育長じゃダメなの?「ダメです。町長をご指名です」と課長。ま、まだ時間があるから、一旦、忘れよう…。で、大会前夜がピーク。ずっと困った、困ったのリフレイン。そして冒頭…。
投球を教わりながら思う。「きっと、子どもたちにもこんなふうに教えてるんだろうな。だから子どもたちは楽しそうに試合してるんだな」と。自分の子どもが卒団しても協力する保護者たちがたくさんいる。部活動地域移行や総合型地域スポーツクラブの原点は、こういった心持ちにあるんじゃないかなぁ。
引地真
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