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おおたま野の花おりおり

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福島県大玉村

-花たちのおいたち-157
箱﨑美義著

訂正:前号3月156左側欄下から2行目~「慎(み深い)」~は、~「慎しみ深い」です。右側欄、上から9行目~厚産地~は、~原産地~です。訂正してお詫びいたします。

■156つづき
別な呼び名では、ペンペングサは、古くから、わら(藁)屋根に生え手を抜くとよく茂り貧乏の象徴とされ、乾いた果実を振ればカラカラと音がすることから「からから」の呼び名があり、また撥草(ばちぐさ)やシャミセングサ(バナ)などは、莢・実(種子)の形が三味線の撥に似ていることからつけられた呼び名である。ババノキンチャク、シャモジグサは、果実(莢)の形が祖母がよく愛用される巾着(布袋)、御飯を盛る、へら(箆)に似ていることからつけられた呼び名である。またナズナの呼び名は、日本が原産国であるだけに日本各地の方言を数えると100以上ある。このナズナは、紀元1,600年以後に世界各地に広まった、いわゆるコスモポリタン(全世界的な)野菜、雑草である。因みにこのナズナの学名の属名は、カプセラで、カプセラ(嚢(ふくろ):密封容器)型をした果実の形によるもので、英名は、シェーバーズ・バース、独名は、ヒルテン・テッシュルで、これらの呼び名は、いずれも羊番(ひつじばん)(飼(かい))が愛用される財布の形に見立てている呼び名である。

■正月7日、無病息災願い、未だに継ぐ七草粥
七草粥の七草は、セリ(芹)、ナズナ(薺)、ゴギョウ(御形:ハハコグサ)、ハコベラ(繁縷)、ホトケノザ(仏の座:タビラコ)、スズナ(菘:カブ(蕪)の別称)、スズシロ(蘿蔔:大根の古称)である。以下に七草粥に、なぜナズナが使われ食べられてきたのか、これらにまつわる(纒)一端をあげてみた。ナズナの生い立ちをみると、陽当たりが良ければ、土のあるどんなところでも種子が芽生え生育し、とても繁殖力が旺盛であること。例えば焼跡にでも第一に生え育つ植物は、ナズナである。この生きる力強さのあることが一つあげられる。他方ナズナの呼び名の「撫っ菜」の「撫っ」は、「打つ」という語意がある。紀元1,600年代、江戸時代に詠まれた「俎板(まないた)の染むまで薺打ちはやす」俳句のごとく、七草粥をつくるため毎年1月6日の晩に包丁、擂粉木(すりこぎ)、俎板など調理道具を使って囃す「薺打ち」の行事が行われてきた。各地方によって文句は異なるが「七草ナズナ唐土の鳥が日本の土地へ渡らぬさきに……ストトントン」などと囃し、ナズナを置いた俎板を盛んに青汁が出るまで打った。この一つには、中国から来る稲などの害となる悪い鳥を追い払うためと、年始めに農作物の豊年を願ったのがその由来だが、家族の無病息災を祈って作る大事な行事食。江戸時代から継ぐ食の伝統の七草粥だが、今、大玉村に食膳にする家庭は何軒あるのだろうか。(つづく)

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