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町の昔話コーナー

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福島県新地町

■瀬上(せがみ)はごろも
むかし福田に、年寄りばあ様と、孝行息子がやっている豆腐屋があったと。ある年の暑い夏、暑さのせいか、ばあ様が寝付いてしまったんだと。息子は貧乏で医者にかけるにも、薬を買うにもお金が無い。せめて生きの良い魚でも食わせて精をつけさせっぺと思って、お盆の草刈りが終わった後、一ツ滝の瀬に魚釣りに寄ってみたと。一ツ滝は、三滝川の上の方さある美しい滝のことだ。その滝の川下の方が大きな瀬になっていたので、そこを瀬上と呼んでいたったと。息子は、そこで今までに見たこともないような良い香りのする美しい衣装をみつけたと。ばあ様の薬代にすっぺと思って急いで衣装をふところに入れると一目散に町へ行き、売ったお金で薬を手に入れる事ができたんだと。これでばあ様も元気になっぺなぁと思いながら夕飯の支度をしていると、肌着姿の美しい娘が泣きながら訪ねてきた。ばあ様の着物を貸して、家に泊める事にしだったと。そしたら次の日もその次の日も娘は帰る様子もなく、そのまま息子の嫁になっちまった。それからというものばあ様と三人で豆腐を売って暮らしていだったが、やがて男の童に恵まれ、ばあ様と親子三人で幸せに暮らしていだったと。
月日は流れ、ある中秋の名月の晩、空から天人※1が舞い降りてきて、娘が天女であること、天女は下界に住むことはできない事を知らされたんだと。娘は「天に帰らなければなりません。お別れです。子どもの事は頼みます。どうか丈夫な子どもに育てて下さい。」と泣きながら天に帰って行ってしまったと。その後息子は、嫁を取る事もなく男手一つで立派にその童を育てあげた。たいそう利発な童だったそうで、七つになるとお寺に上がり、その後は徳の高いお上人になったんだと。
※1 天人 てんにん、てんじん。天に住まう人。特に女性は天女と呼ばれる。
新地語ってみっ会では、語り部による昔話や紙芝居など毎月第3土曜日13時30分から二羽渡神社南、おがわ観海堂(小野俊雄宅離れ)にて参加費無料で、公開しています。興味のある方はぜひご参加ください。

問い合わせ:新地語ってみっ会
【電話】62-2441

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