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町の昔話コーナー

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福島県新地町

■姫君と名馬(前編)
昔々、京の都に美しい姫君がいだったと。姫は年頃になるとますます美しくなり、あちらこちらから縁談が舞い込むようになったが、姫はなしてだか、首を縦にふらねかったと。姫の親たちは、ほとほと困ってしまって、ある晩、姫に聞いたと。姫は泣いてばっかりいて返事しねかったと。したが、親たちに責められて責められて、とうとう最後には小さな声で、「今帝駒(きんていごま)を…好きなのです。」と言ったと。
それを聞いた親たちは腰を抜かさんばかりに驚いた。それから、かんかんになって怒ったと。今帝駒というのは、唐津から献上された天子三代※1に仕えた名馬、つまり馬だったのだもの。今帝駒はすらりと伸びた長い脚、真っ黒な目、風にたなびくたてがみを持っていて、姿かたちの良い立派な馬だったと。また今帝駒の方も、姫になついていたったど。
「なんぼ姫が好きだと言っても、馬と一緒にするわけにはいかねぇ。今日からは今帝駒と会うことは許さねぇ」
父親は姫と今帝駒を遠ざけてしまったと。そればかりか、なんと姫と結婚したいという大臣との縁談を勝手に進めてしまったと。
いよいよ明日は姫と大臣との婚礼という晩だった。厩(うまや)が騒がしいもんだから家来が行って見たれば、いつもはおとなしい今帝駒が暴れていたったと。
「今帝駒にも姫が明日、嫁にいくのがわかるんだべなぁ。お前もさびしいべな。つらいべな。」
家来が、たてがみを撫でながら話しかけると、今帝駒も大きな目から、ほろほろと涙を流したんだと。
その晩のことだった。姫は今帝駒の夢を見たんだと。したら姫様、今帝駒の子どもを宿してしまった。そのことを知った大臣はかんかんになってごしゃいだど。「なに!姫と今帝駒の間に子ができたというのか。そんなことは俺が許さねぇ。今から行って今帝駒を成敗してくれる。」
大臣はギラリと刀を抜くと、今帝駒に切りかかったと。ところが反対に、大臣は今帝駒に蹴り飛ばされて、食い殺されてしまったと。屋敷は大騒ぎになって、今帝駒は厩につながれ、姫はうつぼ舟※2に乗せられて、伊勢の二見ケ浦から海に流されてしまったと。
後編は2月5日号に続きます。お楽しみに~!
※1 天子三代…三代にわたる天皇の意。駒ケ嶺村誌(明治44年)にも姫君と名馬の話が記載されており、第30代敏達(びだつ)天皇の時代の話とされています。
※2 うつぼ舟…空舟。大木をくりぬいて作られた舟のこと
新地語ってみっ会では、語り部による昔話や紙芝居など毎月第3土曜日13時30分から二羽渡神社南、おがわ観海堂(小野俊雄宅離れ)にて参加費無料で、公開しています。興味のある方はぜひご参加ください。

問い合わせ:新地語ってみっ会
【電話】62-2441

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