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町の昔話コーナー

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福島県新地町

■カエルの娘(前編)
昔々、沼倉にカエルのお大尽が住んでいたったと。
蔵が三つもあって、大勢の使用人もいたもんだから、このお大尽のカエルはいつも威張っていたったと。
そのお大尽のカエルには一人娘がいたったと。
気ままな娘でな、年頃になってあちこちから縁談が来るんだげんと
「その家とは釣り合わねがら断ってけろ」
「そんな家から婿とりたくね。断ってけろ」
「あんな家の息子は気に入らね。断ってけろ」
と片っ端から断ってしまうもんだから、さすがのお大尽のカエルも困っちまった。
あちこちの仲人を頼んで婿探しをしたと。ある仲人が
「カエルの中に釣り合う婿がいねんであれば、クジラはなじょったべ」
って話を持って来れば
「あんな図体ばかり大きい男はやんだ」
と断っちまったと。また別の仲人が、
「ほんでは鯛はなじょったべ。なかなかの器量よしだぞ」
って話を持ってきたれば、
「やんだ、あんな男。いっつも酒飲んだような赤い顔してっから、やんだ」
と断っちまったと。
なんぼ話を持ってきても、難癖をつけては断ってしまうんだと。
六月の十五日の山下の笠野のお天王様※1のおまつりの日には、近郷近住のから大勢の人が集まってくるんだと。
お天王様は縁結びの神様だもんだから、ことに若い者が集まって来るんだと。
カエルの娘もおしゃれをして、いそいそと出掛けて行ったと。
遊んですっかり帰りが遅くって、あたりほどりが暗くなっちまったもんだから、急いで帰って来る途中、近道すっぺと思って、水神沼の前を通ったと。
ちょうどその時、沼の主の大蛇が顔を出したと。大蛇は一目でカエルの娘に惚れちまったと。
「おい。カエルの娘。俺の嫁になって水神沼で一緒に暮らさねが」
「やんだ!おめぇみでな、にょろにょろした男はやんだ!」
カエルの娘は一目散に逃げたが、大蛇はあきらめきれずに追いかけてきたと。

縁談があるたびに、なんだかんだ言って、断り続けたカエルの娘。その娘に一目ぼれした大蛇。たまらず逃げ出す娘を追いかけ始めました。娘の運命やいかに。お話は来週に続きます。お楽しみに。
※1 山下の笠野のお天王様山元町の山下地区、笠野にある八重垣神社のこと。

新地語ってみっ会では、語り部による昔話や紙芝居など毎月第3土曜日13時30分から二羽渡神社南、おがわ観海堂(小野俊雄宅離れ)にて参加費無料で、公開しています。興味のある方はぜひご参加ください。

問い合わせ:新地語ってみっ会
【電話】62-2441

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