■大ムカデと赤マムシの戦い(後編)
大ムカデに住処(すみか)を寄越せと言われた北原山の赤マムシの一族。赤マムシの大将は今まで自分達がしてきたことを反省しつつ、やっとの事でイタチの協力を得ることに成功しました。イタチへの頼み事は百足(ひゃくそく)あるムカデの草鞋(わらじ)を一足奪うこと。さて、赤マムシの運命やいかに。
赤マムシがイタチに協力を求めていたころ、大ムカデは、一族一門が集まって草鞋づくりしていたったけど。
なにせ去年は長雨で藁(わら)の出来が悪くて量も少なかったもんだから、ありったけの藁をかき集めて、
「ほれ藁すぐれ」「藁を打て」「小手縄作れ」
と大騒ぎしながらも、それでもなんとか百足の草鞋を作り上げた。
明日の朝間に履きやすいようにと、百足の草鞋を右と左に揃えて並べたのを眺めながら
「これで勝ったも同然だ。」
と前祝の大酒盛りが始まったもんだから、そこに忍び込んだイタチは、まんまと草鞋を一足盗むことができたと。
赤マムシの大将は大喜びしてその草鞋を諏訪神社の東の芦尾様に奉納して戦勝を祈願したと。
さて、いよいよ戦いの日。
大ムカデの大将は、前の晩の酒でまだフラフラだったと。皆で百足の草鞋を履かせたが、最後になって一足たりねぇことに気がついたと。
足りない草鞋を作っかと思っても時間も無ぇし、藁も無ぇ。仕方が無ぇから最後の足は裸足のまま出かけたと。
一方の赤マムシの大将、一族郎党引き連れて、一の沢の西に立って今や遅しと大ムカデが現れるのを待っていた。
「ムカデの毒は強いかしれないが、成りは小さくともこの俺様の毒だってムカデなんぞに負けねぇ。」
と赤い顔して力んでいたと。
そこさ、のた~り、のた~りと現れたの大ムカデ。百本の手足に武器をたんがいで現れたんだもの、赤マムシはかなうはずもなく、ジリッジリッとカナゴ山※1の方さしっちゃった※2ど。
したが、それも赤マムシの作戦だった。
トゲトゲのカナゴ山で草鞋を履いでねぇ大ムカデの足は傷つき、そこからカナゴの毒が体さ回りはじめて、そのうちに、だんだん体がしびれてきて大ムカデの動きが鈍くなってきたと。
そこを狙って赤マムシは足にガブリと噛み付いて毒を効かせたと。
さすがの大ムカデも三日三晩苦しんで、次第に弱まり、とうとう命を落としてまったと。
大ムカデを退治した赤マムシの一族、喜んだ喜んだ。大喜びだったと。
そしてその後も安心して北原山に住み着き栄えたそうだ。
今でも北原山にはその子孫がいっぺぇ居るから、気ぃつけろよ。
※1 カナゴ山 北原山には奈良・平安時代頃の製鉄跡が確認されています。カナゴは製鉄の際にできる鉄の滓(かす)のことで、今でも北原地区の山間ではカナゴが落ちています。
※2 しっちゃる 後ろに下がる
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