■狐の化け比べ(後編)
いつも色々なものに化けては村人を困らせていた福田の台山と山崎の狐たち。ある時どちらが化けるのが上手か化け比べをすることとなりました。先に化けて見せたのは台山の狐たち。ものの見事な結婚式の行列に化けて見せました。次の出番は山崎の狐たちの出番でしたが…。
いよいよ明日は山崎の狐たちが化ける番になったと。したっけば、その前の晩げに雪が降ったものだから、朝起きてみたれば、一面の銀世界だったと。
福田の鉄砲撃ちたちが、朝早くから集まって相談したと。
「いいあんべに雪が積もったから今日は山崎の狐退治に行かなねぇが。」
「そいずはいいなぁ。雪の上についた足跡を追いかけていけば狐の巣穴につくべ。」
「いっつもいたずらばかりされているから、今日は一匹残らず鉄砲で撃ってくれっぺ。」
と相談がまとまったもんだから、鉄砲撃ちたちは犬をいっぱい引き連れて、山崎の狐の巣穴目指して出掛けたと。
いやぁ驚いたのは山崎の狐たちだぁ。
今から出かけっぺと支度していたっけが、向こうの方から犬の鳴き声が聞こえてきたと思ったら、鉄砲撃ちたちがこっちさ向かってやってくるのが見えたと。
ほうなっつぅど、もはや、化け比べどころでねぇ。あわてて狐の子っこを巣穴の奥に隠して、「どんなことがあっても絶対に出てくんなよ。」
と言い聞かせて、台山の方に向かって一目散に逃げ出したと。
鉄砲撃ちたちが山崎に到着してみたれば、山崎から台山に向かって、雪の上に狐の足跡がいっぱい残っていたったと。
「ほれ!狐は台山の方さ逃げたぞ。追え!追え!」
犬と鉄砲撃ちは台山に向かった。
何も知らねぇのは台山の狐たち。
小高い丘の上で見物していたっけが、山崎の狐が走ってくるのが見えたと。
「あれ?なんだべ。山崎の狐は何もばけてねぇなぁ。」
と思って見ていたれば、その後を犬が吠えながら追いかけてきた。さらにその後を鉄砲撃ちたちが追いかけて走ってくるのが見えたと。台山の狐たちは「いやいや大したもんだ。見事なもんだ。」と感心してやんやの喝采をしていたったと。
「ほでねぇ!本物だ!本物だ!」
と山崎の狐が叫んだども、犬も鉄砲撃ちも山崎の狐が化けたと思っているものだから、台山の狐の耳には入らねぇがった。
「早く逃げろ!早く逃げろ!」
と叫びながら、山崎の狐たちが台山に狐の巣穴に飛び込んだのを見て、その時になって初めて犬と鉄砲撃ちが本物だと気がついた。…ほだども、気づいたときには遅かった。
台山の狐は鉄砲で撃たれてあらかた倒さっちゃど。
昔から山崎の狐は一匹も捕まったことがねぇんだと。
見事な花嫁行列に化けて見せた台山の狐。何にも化けらんねぇがったども一匹も捕まらなかった山崎の狐。はてさて、化け比べの軍配はどっちさあげたら良いんだべ。
新地語ってみっ会では、語り部による昔話や紙芝居など毎月第3土曜日13時30分から二羽渡神社南、おがわ観海堂(小野俊雄宅離れ)にて参加費無料で、公開しています。興味のある方はぜひご参加ください。
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