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【連載】昭和村の歴史と文化~第10回~

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福島県昭和村

昭和村文化財保護審議会委員長
菅家 博昭(大岐)

◆萬載計画(ワンザイ・プロジェクト)
2023年9月15日午前9時、カラムシ(苧)の生産に関する中国から6名の来日者があり「からむし織の里」にて懇談した。その代表者はスパトウさん(43歳)。閑雲夏布工作室を経営している。夏布とはカラムシ布のことである。
案内者は京都宇治でカラムシ繊維等の開発輸入を古くから行っている有限会社青土(あおに)の橋本夫妻ら3名。古くからスパトウさんらと商業的な取引がある。
昭和村側は私と妻の洋子、大芦の須田雅子さんに英語の通訳をお願いした。使用言語は英語で、とのことだった。須田さんは後刻、沖縄のブー(苧)の現況についてスライド写真を使用し英語で報告した。
中国側のスパトウさんは2017年のからむし織の里フェアに橋本夫妻の案内で来村されている。来村後、2018年から、郷里にて萬載計画(ワンザイ・プロジェクト)を実行している。土地のカラムシを調べ、品種をたくさん試作しながら良い繊維の取れる品種を特定し、栽培・生産を一貫して行う、という若い人たちのプロジェクトである。中国政府が調査したカラムシは中国国内に約千品種確認されている。
スパトウさんはご自身の現在の商業活動を含め、「夏布的未来 The Future of KIBILAASA」という内容のスライド報告をされた。
江西省内で、2013年に閑雲夏布工作室を創設した。苧の機織り職人であったが、思うところ有り、独立した。その詳細は、夜に中向のペンション美女峠で行われた夕食会の席上で聞いた。将来、中国訪問を約束し私たちは帰宅した。
スパトウさんの同年代の江西科技師範大学職員のリョウ先生は、中国の苧(夏布)の歴史についてスライド写真を使い報告された。中国側はこの2名が現状の説明をされた。リョウ先生はあまり英語が得意ではないので、としながらも優れた発表であった。
日本国内の苧の生産の歴史と、山形県・会津等の現況(復活した大江町の最上苧(もがみそ))の事例などを紹介した。須田さんはフィールドである宮古島・石垣島周辺の事例を英語で紹介した。
沖縄の苧(からむし)は、「ブー」というが、中国語での発音を聞いていると同じ「ブー」と言っていたのが印象的であった。また歴史的な経過のなかで葛(くず)の繊維も利用しており、昭和村ではクゾと発話するが、クズと発話しているように聞こえた。似た音であるのは、日本は古くから中国文化圏(漢語文化圏)に所属するので、納得できる。
さて、詳細は別に機会を改めて紹介するが、感じたことを今回は記してみる。
(1)中国のなかで、若い人たちを中心に手仕事に興味を持つ人たちが増えている。その流れはSNSによる。インターネットで簡単に地方の取り組みが見られる状況が社会を変えつつあると思った。
(2)製造業の下請けを脱して、畑での作物栽培・繊維取り出し・織布・染色・加工を行う若い人たちが増えている。そうしたきっかけに我が昭和村のからむし文化が国際貢献をしている、ということである。(以下、継続)

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