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昭和村史料探訪記 vol.44

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福島県昭和村

地域おこし協力隊 松尾 悠亮

◆昭和村医学史料の紹介(4) 大沼郡開業医組合について
今月は、『医要諸控簿』(明治19年、本名俊甫)という冊子に収録されている大沼郡開業医組合規則を御紹介します。
『医要諸控簿』は、これまでご紹介してきた医師本名俊甫がまとめた冊子です。医学書の写しや、俊甫が出した死亡診断書の写し、そして今月ご紹介する大沼郡開業医組合規則が所載されています。
○大沼郡開業医組合規則(明治19年10月)
全36条。規則の説明から、明治19年10月22日玉梨村に医員が集まって、この規則が決められたことが分かります。22日に集まった人は、五ノ井玄端(水沼村)・栗城玄誠(中津川村)・本名俊甫(中津川村)・五十嵐光廣(喰丸村)・羽染雲靏(両原村)・瀧澤雲誠(横田村)・須佐玄純(山入村)・若林玄泉(大(ママ)良布村)・押部精(八町村)・船城浅次(小野川村、幹事)・大沼義良(大塩村、幹事)の計11名でした。翌11月1日付で組合幹事の船城浅次・大沼義良から大沼郡長町野主水へ提出されました。

○伝染病への対応
36条全てを紹介するのは難しいので、一部を紹介すると、まず伝染病への対策が挙げられます。各医員で、コレラほかの伝染病患者を明認した場合は勿論、たとえ伝聞であっても患者の所在を組合幹事に報告することとされています(第5条)。また、第5条に基づき、医員から幹事へ伝染病患者の報告があった時、幹事はすぐに組合医員全体へ報告し、臨時会を開き予防治療の方法を協議し、郡役所を経て県庁へ具状すること(第6条)とされました。

○薬価・手術料等の取り決め
薬代(煎薬・丸薬・水薬・散薬・潅腸剤・膏薬・頓服薬・含漱剤・塗擦薬ほか、第21条)、手術料(50銭ないし1円50銭、第22条)、診断書(一件につき5銭ないし50銭、第23条)、死体検案書(一件につき25銭、第24条)、遠くから往診にかかる旅費(第25条)が決められています。
薬代に関しては、現収入または患者の都合によって一週間ごとに請求することという決まり(第25条)もあります。

○医師としての心構え
患者の命を預かる仕事であるので、「単卒」に診察することがないよう、治療する時は心切丁寧に、しっかりと病理を診察するように(第16条)。
組合中で「非常ノ災害ニ罹リタル時」は、組合がまとまって協力し合うように(第17条)。
組合中、同業面目をみだりに辱めるようなことや、「仁術(医術)ノ美タルヲ汚シ」たり、組合条規に違反する者に関しては、郡役所を経て県庁へ報告し、医権を取り上げることもある。

◆まとめ
明治7年に明治新政府が医制を交付し、医師として開業するには免許が必要になりました。また西洋医学が導入される中で、伝染病に対する知識も次第に普及していきました。
今回ご紹介した大沼郡開業医規則が定められた直接的な理由は分かりませんが、医者をめぐる世の中の事情が変わっていく中で、規則を作っていった医師たちの活動はとても興味深く思います。

※詳しくは本紙をご覧ください。

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