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【連載】昭和村の歴史と文化~第9回~

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福島県昭和村

昭和村文化財保護審議会委員長
菅家 博昭(大岐)

◆縄文と繊維植物を考える
「奥会津の縄文」展の講演会が7月29日に昭和村公民館で開催された。主催は只見川電源流域振興協議会で、昭和村共催。
成城大学の田本はる菜さん(文化人類学)は「台湾先住民と織りの仕事の現在」として16ある先住民のうちセデック族の参与観察のなかで、山地と平地を行き来する暮らしのなかで、カラムシとの関わり、生産・消費の「半製品」というあり方に注目した。
2009年から台湾島での調査をまとめた『山地のポスト・トライバルアート 台湾原住民セデックと技術復興の民族誌』(北海道大学出版会、2021年)の97ページを紹介した。台湾に行き、機織りを教わるつもりが、結果的に機織りそのものではないことばかりできるようになったという。裏山に薪(まき)を探しに行く、薪を割る。食用になる野生の実を探す…老人たちのあとに付いて家のまわりをあるきまわり、日々の仕事を少しずつ覚える…「布を織る」技術は、それだけで完結したものではない。
山地には、人間が植えたものではないけれども利用している植物が多数あり、それは「半栽培」といえるものであることを実感された。

福井大学の東村純子さん(考古学)は、縄文・弥生・古代の紡織の変化の講演であった。編み織りの技術と繊維植物、機織り技術の復元、古代の布生産と腰機という内容について話された。
これまで縄文時代はアンギン(編布、縦編み法)とされてきたが、小関清子氏の研究成果により横網み法が多いのではないかと指摘された。縦編み法は、昭和村の民具の事例では「ヒデリゴモ」で、横網み法は「ヤスミイレカゴ」に該当すると指摘された。奥会津や越後の民俗事例ではマタタビ、ヤマブドウ、シナ、アカソ、イラクサ、アサ、カラムシ、スゲ、マコモ等を使用している。古墳時代の輪状式無機台腰機、直状式有機台腰機の2種類が出土した栃木県の甲塚古墳の事例をもとに2種の機織り機が併存したことを示された。
著作の『考古学からみた古代日本の紡織』(六一書房、改訂版2012年)には12ページから昭和村の事例が掲載されている。
また、私信が後日届いたので紹介する。
「先日は、大変お世話になりました。また、カラムシ畑、苧引きも見学させていただき、ありがとうございました。昭和村のカラムシは、背丈も高く、茎も太く、よい繊維を取るために高度に改良されたものだと、実感しました。苧引(からむしひ)きの方法も、昭和村では洗練されていて、長い歴史の中で、良いものを作り出そうと考えられ、受け継がれた究極の技術だと思います。
その繊維加工の技術が、細くしなやかな糸へ、そして紗のような、からみ織りの技術にもつながるのだと思います。講演のときに田本さんの台湾の竹筒での採取の動画にどよめきが上がったのが印象的でした。
また、しらかば荘にからむし織りの作品がたくさん飾られているのが美しく、20数年の変化を感じました」

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