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【連載】昭和村の歴史と文化~第15回~

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福島県昭和村

昭和村文化財保護審議会委員長
菅家 博昭(大岐)

◆佐々木長生さん
2024年2月13日の午後、昭和村公民館で開催された「奥会津冬の暮らし」の講師は会津若松の佐々木長生さん(74歳)。只見川電源流域振興協議会主催。
私は、主催者から送迎を依頼され、長生さんの自宅をはじめて訪問した。3年前に病気の手術をされ、現在リハビリ中で、自動車の運転はできないため送迎することになった。
リハビリは週2回、若松市内の療養機関で行っている。その際、季節ごとの民俗行事を通所されている皆さんに講話するのだそうだ。正月のだんごさし、さいのかみ、2月は節分(まめまき)など、依頼された内容で語り、リハビリも楽しいと語られた。
博士トンネルは今回はじめて通行され、距離が短縮されたこと、晴天の一日であったことなど、会津盆地の飯豊山・磐梯山、博士山、昭和村の雪景色など、家からの往復で見た景色に喜ばれた。
会津高校のある表町にある居宅の玄関には、ミノ(蓑)がひとつ掛けてあった。講演でも語られたが、明治36年生まれの父からもらったもので、その制作者は明治33年ころ生まれの人で、父の友人だという。相馬のミノは10年長持ちするが、奥会津のミノは50年は持つのだという。その秘密は、製作後の雪晒しにある、という。
浜通り・相馬生まれの長生さんは、猪苗代の会津民俗館に勤務されたあとに、福島県立博物館の学芸員として奉職された。定年退職され現在は自宅で『会津農書』等の研究を継続されている。
2011年3月の大津波では、高台にあった長生さんの生家は被災をまぬがれたが、集落のほとんどが流されて無くなったという。
講義で配布された資料は2023年11月に只見町で開催された日本民具学会のシンポジウム資料で、「雪国の手仕事にみる地域性」として長生さんが準備したもので4ページある。雪にさらす(晒す)ものは、ザルやカゴ、アサ布などに限らず、食物(モチやダイコン、菜)も含め、繊維がしまり、より堅く丈夫になる、カビ防止などの殺菌効果もある。
貞享2年(1685)の『伊南古町組風俗帳』には「布さらし」が記載されている。現在の南会津町の旧伊南村、南郷村の様子で以下のようである。現代文に直し表記する。

◆布さらしの事
雪がある時は雪さらしをした。雪が消えれば水さらしをした。薪の灰にてアク(灰汁)をたれ置き、夜はアク(灰汁)にひたし、昼は水の中にカヤあるいはソバガラ、ムギの柄などを敷、その上へ布を引き灰汁を掛ける。取り上げすすぎしばりのしまきにて灰汁にひたし、毎日毎夜このようにして晒し作業をした。細布は20日間、太布は30日間あまり晒しの作業をした。その後、絹張に掛け、張りしたて、ご公儀の御用の布はたたんで袋に入れ、商人方へ売る布は巻布にて売った。

明治19年ころ旅行記があり、米沢生まれで東京の出版活動をした大橋乙羽も、晒し布について『千山万水』(明治32年)に「南会津の片山晒」について書いている。

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