菅家 博昭(大岐)
◆畑小屋の記録
滋賀県大津市の嶋田名穂子さんが12月25日に著書を発刊された。嶋田さんの礼状とともに、本書がクリスマスに我が家に届いた。
『看取(みと)られる神社 変わりゆく聖地のゆくえ』(あいり出版、1650円)である。
嶋田さんは京都にある総合地球環境学研究所の職員として、阿部健一教授とともに昭和村に何度も来村されている。海外からの招聘研究者を案内されての来村もあった(アメリカのサンデル博士2018年4月、フランスのオギュスタン・ベルク博士 広報しょうわ2019年1月号)。
嶋田さんは、個人的な訪問でも、知人宅(昭和村大芦の須田雅子さん)を訪問され地域調査をされていた。大芦の畑小屋集落の閉村式なども立ち会われており、集まった人々の話を聞いている。
小椋又一さんによる畑小屋の山神社の堂宇の解体の経緯、その後、観音様の正法寺への移設、閉村後の人々の動きなども調査されている。
そうしたことを、看取られる聖地として、畑小屋のことを詳述されている(81ページから92ページ)。人々の暮らしがこのようなかたちで記録されたことに感謝したい。また2人目のお子さんを出産されるなかで本書を書かれている。
国内外の聖地・神社の推移をフィールドワーク(現地調査)を通じてまとめたのが本書である。
本の帯には、奥会津ミュージアム館長の赤坂憲雄さんが次のように推薦文を書いている。
「神社とは何か。なぜ、そこにあるのか。その繊細なまなざしによって、地域が共有する記憶を継承し、可視化するための場所としての聖地が再発見される。ムラが終わりを迎えたとき、神社を壊し、焼いて、更地に戻す。そうして聖地の最期を看取る人たちと出会った。聖地を巡る旅は、看取りの日々となった。聖地は生まれ、育ち、看取られる。明治の神社合祀は、村々の自治の基盤であった聖地を標的にして、それを国家神道のヒエラルキーに組み込んだ。小さな聖地は、それでも地域の記憶の拠りどころとして生き残った。だから、聖地のデジタルアーカイブ化という提案に、共感を覚える」
12月20日、文化人類学者の川田順造さんが逝去された。90歳。川田先生は、2005年8月4日に来村された。ファーマーズカフェ大芦家の佐藤孝雄さん(当時は役場勤務)と村内の木地集落跡の案内をした。村内のほか、柳津町琵琶首下平木地も案内した。先生は記録映画『からむしと麻』を制作した東京の民族文化映像研究所の姫田忠義監督に昭和村に行くよう勧められて来村された。
日本の基層文化の、木地挽き、からむし、そして今は草花栽培のひとつ、カスミソウの生産で社会と関係性を保っている。
※詳しくは本紙をご覧ください。
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