齋藤多聞
今年はクマの被害が全国的に多く、県内各地でも被害が相次いでいる。特に9月に入ってからが顕著で、人的被害は過去最多の27件、食害もこれほど様々なものが被害にあうことはこれまでになかったと思う。本町においても、収穫したばかりの袋に入った米が続けて食い荒らされた。これまでのクマ対策といえば、山の中で遭遇しないように、人の生活圏までに来させないようにと、音を鳴らし、食べ物を残さず、緩衝帯を作ることと言われてきたが、既に生活圏に現れたクマに、どう対応したら良いかは難しい課題だ。
9月26日の朝日新聞に札幌のヒグマの記事があった。都市近郊で育った「アーバンベア」が恒常的に市街地に現れて、年々深刻さを増しているそうだ。同じ個体が繰り返しではなく、複数のグループが出没する。都市近郊で生まれ育つことで、人を見ても逃げない個体が育っている傾向があるそうだ。確かに、生まれた時から、人の暮らしに近い所で育っていれば、クマにとっても、そこは地元となるのだろう。ツキノワグマは冬眠中に1〜2頭の子を出産し、親子で約1年半を一緒に過ごすため、その間を人里離れたところで暮らしてもらうところから始める必要がある。
秋田県内には、推定生息数で4、400頭(令和2年4月時点)のクマがいるとされている。被害が増えているといっても、ツキノワグマ地域個体群の存続や生物多様性の確保の観点から、全てを捕獲することはできないし、現実的でもない。個体群の増加率は23%と算出されており、令和4年度の捕獲上限は生息数が増加しない生息数×増加率の年間1、012頭と設定されたが、実際の捕獲数は442頭。捕獲数が上限に達しなければ翌年に繰り越す方式のため5年度は1、582頭となったが、平成29年から令和2年までの平均捕獲数は630頭だから、過去を見ても捕獲上限に達するのはかなり難しいはずだ。このままでは、生息数は維持ではなく、増加していくのが目に見えている。全てにおいて対策としてやれることは限られるが、地域一丸となって進めていくよりないだろう。
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