お医者さんが今伝えたいまめ知識
平鹿総合病院(横手)
佐藤陽子 医師
■RSウイルス:進化する予防法
RSウイルス(以下RS)は、乳幼児から高齢者まで幅広い世代に感染し、肺炎や細気管支炎を発症するウイルスです。世界では、生後6カ月までに死亡する子どもの28人に1人がRS感染によるとされ、毎年世界中で10万人以上の小児がRSで命を落としています。
RSの予防には、従来『抗体薬』が使用されてきました。この薬は、体内でのウイルス増殖を防ぎ、重篤(じゅうとく)な下気道(かきどう)疾患の発症を抑制する特異的抗体です。ただし高価な薬のため、早産児や基礎疾患のある小児のみが対象で、月1回の痛い筋肉注射が必要でした。
今年、新しい抗体薬が登場しました。予防効果は従来のものと同等で、1シーズンに1回の接種で良くなりますが、こちらも非常に高価な薬のため早産児や基礎疾患のある小児のさらにごく一部のみが対象です。欧米では、健康な乳児にも広く使用されており、日本での普及が望まれます。
基礎疾患のない小児に適した新たな選択肢としては、妊婦の方向けのワクチンが今年新たに発売されました。妊娠24~36週に接種することで、母体の抗体が胎児に移行免疫として伝わり、生後すぐの赤ちゃんをRSから守ることができます。費用は自費で約3万円ですが、新生児期の感染予防として有効な選択肢です。
現在、多くのRSのワクチンが研究されており、開発が進んでいます。いずれ、RSという病気がなくなる日が訪れるかもしれません。
横手市医師会HP
【URL】http://yokote-ishikai.sakura.ne.jp/
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