■白神ねぎ10億円産地誕生ヒストリー
JAあきた白神は、米に代わる戦略作物としてキャベツ、みょうが、山ウド、ねぎ、アスパラガスを主要5品目に設定。「白神」の名を冠し収益を伸ばしてきました。
中でもねぎは、平成22年に9億6000万円の販売額を記録。JAあきた白神ねぎ部会の悲願であった10億円販売達成に向け、25年にはJAあきた白神内に「白神ねぎ10億円販売達成プロジェクト」が発足しました。プロジェクトのポイントを、同JA営農企画課の小沼直久係長に聞きました。
ポイントその(1)越冬早どりねぎ
着目したのが、値段が高いけれど生産数が少なかった早どりの夏ねぎです。さまざまな栽培試験を経て、10月下旬に播種し、4月に定植する「越冬早どりねぎ」を推進することになりました。冬期の育苗にはハウスが必要となることから、JAが育苗ハウスを増設。これにより、高単価で取引される夏ねぎの出荷量が増え、さらに規格が統一された白神ねぎを通年で一定量出荷が見込めるようになり、10億円産地に一歩近づきました。
ポイントその(2)生産者支援
作付面積を拡大した生産者に、増反分10a当たり2万円をJAが独自で助成しています。収益が上がらない人には、営農指導を徹底。技術の底上げを図っています。さらに必要な情報をすぐに農家に伝えられるようメールマガジンで市況などを配信。今年9月からはLINEに変更しました。また「ねぎ通信簿」でA品率などを伝えて、農家の皆さんの意欲アップを図っています。
ポイントその(3)PR
ポスターやのぼり、はんてんを作成しトップセールスの際などに活用しています。また「動く広告塔」としてラッピングトラックを用意。関東方面へ出荷する場合に活躍しています。
「10億円突破はみんなが本気を出した結果」と小沼さんは振り返ります。令和2年度には販売額が過去最高の17億7500万円となりました。現在の目標額は21億円。大雨対策を講じながら、挑戦が続きます。
◆販売額21億円達成に向けて
現在、白神ねぎは関東圏を中心に北海道や大阪府、愛知県などに出荷されています。関東圏の取引市場は、当初の2カ所から7カ所に増加。出荷先が増えた理由について、JAあきた白神能代営農センターの清水貴智センター長は「白神ねぎは品質が安定している。品質が良いねぎが通年で入って来るという評判が広がり、取引する市場の数が増えました」と話します。
◇白神ねぎ海外へ
昨年8月~12月には、初の海外輸出として台湾へ出荷されました。百貨店での販売のほか、料理店に向けて業務用として納品。品質が高く評判も良いことから自信を持って顧客に提案できると評価が高まっています。
令和5年度はさらに台湾内でのシェア拡大を目指し、4月20日に春ねぎから出荷を開始。
10月までで毎週のように注文があるといいます。7年度には1万kgの出荷が目標。輸出量の拡大も進めていきます。
平成27年から8年連続で達成している販売額10億円は、今年度も10月に達成。清水センター長は「ねぎの生産者も増えている。今以上の品質を目指し、ロットの数も増やしていきたい。来年も達成できれば10年連続となり区切りが良い。念願の20億円達成と一緒にお祝いしたい」と期待を込めます。
◇大雨被害と猛暑を乗り越えて
販売額20億円達成が期待された今年は、7月の大雨に加え、記録的な猛暑がネギの生育に暗い影を落としました。ねぎ部会の大塚和浩部会長は「特に猛暑の影響が大きかった。8月まではまずまずの出来だったが徐々に生育不良になり、被害のピーク時で例年の3分の1から半分程度まで落ち込んだ」と話します。
全国的にねぎが不作となる中でも、白神ねぎは品質を維持しながら安定して出荷しており、各市場からの高い評価は変わりません。
「農家さんたちが頑張ってくれました。抜き打ち検査の成果もあり、出来は年々良くなっています。自然災害に打ち勝つのは難しいが引き続き対策を講じながら、全国で待ってくれているお客さんたちのもとへ自慢の白神ねぎを届けていきます(大塚部会長)」。
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