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(巻頭特集)暮らしに木の温もり 美しき秋田杉桶樽(おけたる)2

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秋田県能代市

■秋田杉桶樽の良さ生かし時代に合わせたもの作り
享保9(1724)年、市内には54軒の桶屋があったといわれています。日本の醸造業には杉の桶と樽が欠かせず、米代川沿いで資材となる秋田杉が手に入りやすかったことが本市で栄えた背景にあると考えられます。
現在市内には、樽冨かまた、能代製樽、清水桶屋の3社の桶樽製造会社があります。各社、伝統を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた製品作りを行っています。
関東圏の百貨店のイベントに製品を出展したり、製作工程を実演したりするなど伝統工芸の技の発信にも尽力しています。市でも魅力発信につながる活動に対する助成金を用意しサポートを行っています。
桶樽製品は、生活必需品だった昭和30年代に比べて需要は減ったものの、確かな機能性と天然素材ならではの美しさなどから近年全国から再び注目されています。市内3社の製品や思いに触れながら、貴重な地場産業の魅力を感じてみませんか。

◇樽冨かまた
弘化3(1846)年創業。能代に現存する最も古い桶屋として知られる、鎌田長十郎が率いた「鎌長」が前身です。現在は「現代の名工」に選ばれた11代当主鎌田勇平さんの孫の柳谷直治さんらが製品開発を行っています。
同社が商品づくりに掲げるテーマが「おひつと、一汁一菜。」です。香りの良さや水分保持能力の高さといった、昔から使われてきた理由にフォーカスしつつ、現代の食卓に溶け込む製品作りに注力しています。
商品ラインアップは「一汁一菜」をキーワードにご飯、ぬか漬け、みそ汁の3種に限定。
テーブルの上でも使いやすい4サイズをそろえたおひつ、楕円形でかき混ぜやすいぬか櫃があり、令和6年には漆で仕上げた仕込み桶のみそ櫃を発売予定です。
取締役の柳谷浩二さんは「自分で作ったみそなら一人暮らしの人でも自炊を考えるようになるはず。心と体を健やかにしてほしい」と話します。

◇能代製樽
昭和21(1946)年創業。結婚式や祝いの席に用いられる酒樽をはじめ、麹ぶたや木桶を製造しています。
12月~1月に最盛期を迎えるのが酒樽作りです。秋田杉の丸太から切り出して乾燥させた榑を使い、職人一人ひとりが組み立てから仕上げまでを担います。1日に作る量は全体で50個ほど。最盛期には60個に上るといいます。
「令和2年以降、新型コロナの影響を大きく受けました」とは代表取締役の畠次郎さんです。3年度の売り上げは前年度の3割ほど。「鏡開きが行われる結婚式が減ったのが大きい」といいます。
この逆風をチャンスに変えたのが息子で取締役専務の健男さんです。コロナ禍前まで酒樽製造が忙しくてできなかった木桶作りを令和3年に開始。八峰町の酒蔵に併設したカフェに天然秋田杉製の木桶4本を納品しました。健男さんは「今まで作ってきたサイズより大きく不安もあった。それぞれの酒にストーリーが生まれることを期待したい」と話します。
「77年間酒樽を作ってきた。昔のような時代に戻るのは難しいが無くなるのはあり得ない。どのように生き残っていくのかを息子に任せたい」と次郎さんは期待を込めます。

◇清水桶屋
昭和61(1986)年に桶業に就いた清水康孝さんの工房です。平成2(1990)年に独立後、従来の秋田杉桶樽とは一線を画した独自の作品作りに勤しんでいます。
清水さんが手掛けるのは、柾目の木目が美しい桶製品。従来の物と異なる特徴は、竹や銅でできたたがをあえて付けていないことです。
水回り用具として盛んに使われていた桶を、現代の生活の中でも気軽に使えるように見直し、この形にたどり着いたといいます。「伝統の枠にとらわれないことでいろいろなものが作れるようになりました」と清水さんは話します。
上部がざっくり割れた花器へぎ目や手に柔らかくなじむ木っぷなど目を引くデザインが特徴です。ニューヨークのギャラリーなどからも注文があった他、欧米の企画展にも多数出品しているそう。令和5年には新製品の桶弁を発売しました。
「自分のペースで作っているので待てる人じゃないと買えない」と清水さんは笑って教えてくれました。完成まで数カ月かかることもあるそうですが、海外でも評価される個性が光る製品を買い求める人は少なくありません。

◆伝統を紡ぐために
3社の皆さんに秋田杉桶樽の今後についてメッセージをいただきました。

◇清水桶屋秋田杉桶樽協同組合代表理事長 清水康孝さん
近年、能代の桶樽業界は若い人の活躍が目覚ましい。新型コロナの影響もある中で頑張っている姿は私自身励みになります。これからも若い人たちに頑張っていってほしいですね。

◇樽冨かまた 柳谷直治さん
今、桶樽は必需品ではないかもしれませんが、暮らしを健やかにしてくれるものだと自信を持って言えます。良いものを作っていることをしっかり伝えられるよう、情報発信にも力を入れていきたいと思います。

◇能代製樽専務取締役 畠健男さん
最近カフェをオープンした八峰町の酒蔵に、酒を仕込むための木桶を納品しました。今後も「こんな桶樽製品がほしい」という声を一つずつ拾い、付加価値をつけて商品化できるよう頑張りたいです。

◆体験・イベントで魅力発信
能代の多様な産業が一堂に会す、のしろ産業フェアで秋田杉桶樽の製造実演を実施しています。普段なかなか見られない貴重な機会となっています。

問合せ:
樽冨かまた…能代市末広町4-3【電話】52-2539
能代製樽…能代市字後谷地2-3【電話】52-5622
清水桶屋…能代市真壁地字道添65-3【E-mail】pailshop@amber.plala.or.jp

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