■日本語語学指導員現地レポート
第12代日本語語学指導員 堀縁さん
鹿角市出身。花輪高等学校卒業後、獨協大学外国語学部に入学。ドイツ語専攻。新潟県で地域国際交流協会に従事するなど、豊富な国際交流活動の経験を活かし、日本語語学指導員に就任。
前回はハンガリー人の名前について紹介しましたが、今回は名字について紹介します。
ハンガリー人の名字は、多い順にTóth(トート),Nagy(ナジィ),Szabó(サボー)です。職業由来の名字も多く、鍛冶屋を意味するKovács(コヴァーチ)や大工を意味するLakatos(ラカトシュ)もよく目にする名字です。また、ハンガリー料理で有名な牛肉と野菜のスープをGulyás(グヤーシュ)と言いますが、これも職業に由来した名前で、元は牛飼いを意味し、彼らが作っていた料理が転じて料理名になったそうです。ハンガリー語はウラル語族というウラル山脈の麓(ふもと)から移動した民族の言語グループに属し、ハンガリー人の氏名は、日本語と同様に名字、名前の順で表します。これはヨーロッパ内でも珍しく、文法にいくつか日本語との共通点も見られます。
さて、現行の日本の民法では婚姻の際に夫婦どちらかの名字に改姓する必要があります。現在、選択制夫婦別姓について議論がされていますが、ハンガリーの場合はどうでしょうか。
40~50年前のハンガリーでは、女性は男性の名前の後ろに「~の妻」という意味のné(ネ)を付け、「男性の名字、男性の名前+né」を名乗り、元の女性の名前はなくなっていたそうです。名前の日を祝うハンガリーで、婚姻と同時に自分の名前が消えてしまうのは複雑な思いを感じます。しかし現在は、男女ともに婚姻前の名字を引き続き使用したり、互いの名字を併記したりでき、そのパターンは10種類以上あるそうです。
婚姻については、日本と同様に異性婚しか認められていませんが、多様化する「かぞく」や「ふうふ」の在り方について、今後両国がどのような選択をしていくのか興味深く見守りたいと思います。
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