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特集-Special Feature-地域医療を守るために(2)

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秋田県鹿角市

■スペシャルインタビュー INTERVIEW
地域医療のトップが語る「今と未来」
実際に医療の現場に携わる方は、地域医療の現状をどのように考えているのでしょうか。市内の医療の最前線で活躍されるお二人に、それぞれ話を伺いました。

▼医療体制充実のため、医師の確保を続けていく
かづの厚生病院 院長 吉田雄樹(ゆうき)さん
盛岡市出身。岩手医科大学卒。岩手県立病院や岩手県高度救命救急センターでの勤務などを経て、平成28年にかづの厚生病院院長に就任。専門は脳神経外科。趣味は釣りとゴルフで、米代川での鮎釣りや、三陸海岸でのヒラメ釣りを楽しむ。

○常勤医師の確保に取り組む
私がかづの厚生病院に来たときには、直接命に関わる科である循環器科・泌尿器科の常勤医師がおらず、心臓疾患などの急患が来ると、当直医が救急車に乗って岩手医大に行くなど、他の科の医師の負担がとても大きい状況でした。
地域医療の観点からもこの状況を打開するため、大学病院に相談。経験豊富な医師の派遣は難しいということでしたが、若い医師であれば派遣できるということで、現在は循環器、泌尿器ともに常勤の医師を2人配置できるようになりました。そういう意味では、他の科の医師の負担が減りましたし、地域住民の方への治療もスムーズにできる形になりました。
分娩集約については、市民の皆さんにご心配をおかけしています。産婦人科医は24時間体制で分娩に対応しなければなりません。安全な出産ができるよう、産婦人科医だけでなく、麻酔科医や小児科医も必要となるため、全国的にも、ある程度の人口規模に対応する形での集約が進められています。ご理解くださいますようお願いします。

○病院機能評価の認定
当院では昨年、良質な医療の実践などについて(公財)日本医療機能評価機構が中立的な見地から評価する「病院機能評価」の認定をいただきました。
この認定は、大学病院では必ず取らなければいけないもので、当院のような地方病院で認定を受けるのはなかなか難しいのですが、職員が病院の医療体制の改革に取り組んでくれたことで認定につながりました。今後も認定病院として、地域に根ざし、信頼と納得の得られる医療サービスを提供できるよう努力していきます。

○現状の医療体制を維持したい
今後、鹿角市に限らず、どの地域でも人口減少が進んでいくと思います。その中で、今の医療体制をどの程度維持していけるかというのはとても難しい問題です。将来的に、需要に応じて病院の体制も変わっていくのはやむを得ないことだと思っています。
しかし、仮に病院の体制が変わったとしても、医療面で皆さんからのニーズに応え続けられる規模の医療体制は、維持していきたいと考えています。
そのために、医師や看護師、職員の数を何とか現状維持していきたいというのが今の一番の目標です。今は職員を募集しても、こちらの希望通りの人数を確保できないというのが実状です。しかし、医師や職員が働きやすい環境を整えることが、地域の医療サービスの充実につながってくると思いますので、現状の医療体制を維持できるよう、これからも精一杯取り組んでいきたいと思います。

▼居心地の良いまちをみんなで作っていきたい
(一社)鹿角市鹿角郡医師会 会長 小笠原真澄(ますみ)さん
同大学病院リハビリテーション科に勤務。平成3年に大湯リハビリ温泉病院院長に就任。医師会の会長として、コロナ禍のワクチン接種体制の整備にも注力。趣味は、食を満喫しながらローカル線を楽しむ列車旅。

○医師数・診療科の不足が課題
鹿角市鹿角郡医師会では、圏内の医療機関で分担しながら「休日・夜間の在宅当番医の担当」「学校保健活動・母子保健事業への協力」「県広域予防接種事業への協力」などといった活動をしています。
基本的には、行政と連携しながら、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種や発熱外来の対応など、公共の衛生管理や健康管理を担っています。コロナやインフルエンザなどの感染症が流行した際は、医師会内で情報を共有して、それぞれの医療機関の対応を決定しています。
鹿角市は、全国と比較すると医師数が少なく、診療科も全て整っているわけではないので、受診する科によっては、市外へ行かなければならないというところが課題です。そういう点では、ここ数年、皮膚科や小児科、呼吸器内科を専門とするクリニックがオープンし、以前より診療科が揃ってきたことは、地域医療の充実のためにも良いことだと思います。

○医療機関の役割を明確に
今後、どんどん人口減少が進んでいく中で、元々少ない医療資源がさらに乏しくなっていくことが予想されます。その中で、市内の病院の機能をどのくらい維持していくのか、仮に規模を縮小したとしても、どこにどういうものがあったら、市民の皆さんの利便性を損ねずに医療機関を維持していけるかということを考えていく必要があります。
私は、地域医療を守っていくためには、地域の中で漠然としてある役割分担のようなものを突き詰めていくことが必要だと考えています。例えば、市内の病院で言うと、かづの厚生病院は急性期、大湯リハビリ温泉病院は回復期、鹿角中央病院は慢性期みたいな役割のイメージが何となくあると思います。そういった医療機関の役割を明確にし、再構築することが医療資源の維持につながると思います。
また、これからは、自分の病院だけで解決策などを考えるのではなく、医療機関同士で連携を深めたり、あるいは業種を超えて何が最善なのかをみんなで考えたりする場を持つことが、地域医療を守るために大切だと感じています。

○居心地の良いまちにしたい
私がいつも目指しているのは、体であれ、心であれ、例えいろいろな障がいがあったとしても、そういうことに関係なく、一人一人が住んでいて良かったと思える居心地の良いまちづくりです。私たちの言葉では「居甲斐(いがい)がある」と言いますが、日頃の診療の中で患者さんが、居甲斐がある場所をこの地域の中で見つけていくところにやりがいを感じますし、鹿角市が地域全体でそんなまちになれるよう、医師会もお役に立てれば何よりです。

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