法の広場

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■分かってほしい
被害額が百万円単位の詐欺事件を弁護士になってから数多く見てきました。知性も地位も財産もある人がだまされています。なぜでしょうか。「承認欲求=他者に認められたいという願望」が、理由の一つと言われています。自分の価値や努力、悩みを分かってほしいという誰にでもある感情。身近に分かってくれる人がいればいいのですが、離別、病気、進学、就職、出産、老化など、人間関係には変化もあります。そこに自分を分かってくれる人が現れると、ふと気を許し、大金を出してしまいます。また、一握りの成功者の心情を分かってくれる人は少ないので、成功者ほど孤独で、だまされやすく、大金を出してしまうかもしれません。
話は変わりますが、僕には、承認欲求がほぼありません。思い返すと3歳の頃の記憶につきあたります。母がお迎えにかなり遅れて来たので「ママは僕のこと愛してないもん!」と泣いて抗議します。母は昼ドラみたいなセリフを吐く僕がかわいくて思わず笑ってしまいます。寂しかったのに、遅刻を棚に上げて笑われ、僕はさらに大泣き。愛情を注いでくれる人から分かってもらえない最初の記憶として鮮明に覚えています。
詐欺で承認欲求を利用する場合はこの逆だと思うのです。あなたの価値や悩みをよく分かってくれるその人は、あなたに愛情を抱いているのか。あなたのお金に興味があるのか。3歳の僕は分かってもらえなかったけど愛情は感じていました。そのうち、愛情と理解は別物だと気付き、他人の評価を気にしなくなりました。
詐欺でだまされそうになっても、最終的にお金を払わなければ、被害はゼロです。逆に、詐欺師にお金が渡ると、すぐ引き出されて闇に消えます。裁判で取り戻すこともかなり難しいです。少しでも怪しいと思ったら、お金を払う前に電話をください。

志賀貴光(たかみつ)弁護士
法テラス鹿角法律事務所
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