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自治体の皆さまへ

持続可能な農業を目指して(1)

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群馬県

農業は私たちの食生活を支えるために欠かせない産業です。県ではその中でも有機農業をはじめとする「環境に優しい農業」の拡大に取り組んでいます。
今回は「環境に優しい農業」とはどのような農業なのか、なぜ重要なのかを、県の取り組みや従事する人の思いと共にお伝えします。
皆さんもこの機会に環境に優しい農業について理解を深め、食べることで応援してみませんか?

■なぜ今、環境に優しい農業が求められる?
県が環境に優しい農業を推進する理由や、そのための県の取り組みを担当者に聞きました。

日本では化学肥料の原料のほとんどを輸入しているため、世界情勢や円安の影響を受け肥料の価格が高騰し、農業経営を圧迫しています。また化学肥料や化学合成農薬の過剰な使用による環境や生き物への影響などが懸念されています。
こうした状況を受けて「環境に優しい農業」の拡大が求められています。環境に優しい農業とは、畜産堆肥などの有機物を使った土づくりを通じて、化学肥料や化学合成農薬を削減するなどして環境に配慮した持続可能な農業のことです。
畜産業が盛んな群馬県の強みを生かし、堆肥を活用した有機質肥料の普及を図るため、県では今年度新たに堆肥活用に関するモデル事業を実施しています。この事業を契機に県内の畜産業で発生した堆肥を有機農業に活用する、資源循環型農業の仕組みづくりを進めていきます。

県庁農政課
田中一史さん

■環境に優しいさまざまな農業
県では化学肥料と化学合成農薬を使用しない有機農業の面積拡大を目指しています。しかし有機農業を始めることは簡単ではありません。そこで農家の皆さんがそれぞれの状況に合った環境に優しい農業に取り組めるよう、有機農業の他に「特別栽培農産物」と「ぐんまエコファーマー」の合わせて3つの環境に配慮した農業の実践を農家の皆さんに呼びかけています。

▽3つの環境に優しい農業

▽県内の市町村でも有機農業が広がっています
県内では甘楽町、高山村が地域ぐるみで生産から消費までの一貫した有機農業の取り組みを行う「オーガニックビレッジ宣言」をしました。学校給食での有機農産物の利用や「オーガニックマルシェ」での地産地消を始めています。

甘楽町の有機農業の取り組みを動画で紹介しています!
※二次元コードは本紙またはPDF版をご覧ください。

■農林大学校社会人コースに「有機農業専攻」を設置!
農林大学校では昨年度から県民向け講座「ぐんま農業実践学校」に有機農業コースを設け、野菜における有機栽培技術の習得を支援しています。
さらに今年度からは、「社会人コース」に新たに「有機農業専攻」が開設されました。どのような人が何を学ぶのか、どんな思いで授業を行っているのかを、担当する定方さんに聞きました。

県立農林大学校 社会人コース
定方陽介さん

このコースは社会的に環境に配慮した農業が必要とされている中で、有機農業に関する教育を進めるために設置されました。現在は有機農業での新規就農を希望する、社会人経験者6人が生徒として学んでいます。
環境保全のためには、有機農業を継続していくことがとても重要です。私が授業を行う上で1番大切にしていることは、生徒自身がどんな農業をしていきたいかを決められるように、たくさんの情報を伝えるということです。
例えば化学合成農薬を使用せずに近年の高温による雑草や病害虫の駆除などに対応するのは、とても大変です。そこで実習や県内外の有機の先輩生産者を訪問するなどして、生徒たちにその実情を知ってもらうようにしています。また有機農業でも、自然由来の成分を使用した農薬であれば使用できることなどを伝えています。生徒が自分の状況に合った有機農業で就農できるようにサポートしていきたいです。

■有機野菜を楽しんで選んでほしい
高山村で有機農業を行う平形さん夫妻。夫の清人さんは生産を、妻の佐和美さんは広報を担当しています。有機農業に携わるそれぞれの思いを伺いました。

Kimidori farm and kitchen
平形清人さん(左) 佐和美さん(右)

●有機農業を始めるまで
清人さん:初めて有機農業を意識したのは、大学で環境学を学んでいた時のことです。ゼミで行ったエクアドルでは、企業による開発が進み、河川汚染などの環境破壊が起こっていました。そんな中、現地の人たちが環境や自分たちの生活を守るために有機農業を行っているのを目の当たりにし、自分も環境に配慮した農業に携わりたいという思いが芽生えました。
その後、有機穀物を扱う仕事や環境に関する活動を経験して高山村に戻り、有機農業を始めることになりました。

●有機農業の面白さ
清人さん:有機農業を始めて10年以上経った今でも、毎年新たな課題が出てきます。有機農業は天候に左右されやすく収穫時期も限られるので、収穫量が安定しないなどの問題もあります。それに伴い、出荷の調製にも苦労します。しかし畑の状態や天候を観察し、生産方法の改良に成功したときや、私たちの野菜を楽しみにしている皆さんの期待に応えられたときには大きな喜びを感じます。
また短い期間ではありますが、有機農業を始めたい人や興味のある人などを農業宿泊体験のような形で受け入れています。この交流からも新しい気づきをもらっています。

●野菜を選ぶきっかけを
佐和美さん:私たちは環境に配慮したいという気持ちから有機農業を行っています。その気持ちに共感してもらえれば嬉しいですし、消費者の皆さんに野菜のことを少しでも知ってもらい、楽しみながら購入してもらいたいと思っています。そのために作物がどのようにして育ってきたのかをSNSなどで発信したり、より気軽に野菜を楽しめる加工品を作ったりしています。
その他にも高山村の「さとのわカフェ」に野菜を卸しています。今月の「ぐんま広報」の表紙は、私たちが作ったビーツやトウモロコシを使用したピザとスープです。
これからも、多くの人に有機農産物に興味を持ってもらえるような工夫をしていきたいと思います。

群馬は山間部もあれば平地や盆地もあります。それぞれの土地で育つ野菜の種類や旬の時期はさまざまです。県産の野菜をたくさん食べて、その中で有機農産物にも触れてもらえるとうれしいです

▽有機野菜を作るぐんまの農家の皆さんの思い
県内の有機農業に携わる農家の皆さんの思いを1本の動画にしました!県公式YouTubeチャンネル「tsulunos」でぜひご覧ください

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