■仏師
◇人が喜ぶ姿をみると自分も嬉しくなります
杉山芳廣(よしひろ)さん(舞木14区・74歳)
杉山芳廣さんは木彫りの仏像製作に情熱を注ぐ日々を過ごしています。興味を持ったのは48歳の頃。何かきっかけがあったわけではなく導かれるように自然と惹かれていったそうです。その時は近くに彫り方を教えてくれる先生がいなかったので、師事を求めて富士見村(当時)の藤井基栄先生のもとを訪問。そこで仏師(※)としての基礎を学ぶことになります。
仏像の木彫りには様々な良さがあります。精密な彫刻や独自のデザインは、木の質感や色合いを活かし、視覚的にも楽しめます。また、職人一人ひとりの技術が込められており、彫り方や仕上げにも個性が現れるそうです。
木彫りには楠などの木が向いています。刃の通りがよく、適度な硬さもあり木目を気にせず彫ることができるので最適。また楠は昔から樟脳(しょうのう)として使われ、芳香性があり、腐りにくい性質も持っています。
「檀家さんが少しでも喜んでくれたら」という想いから町内の寺院にも丹念に祈りを込めながら彫った仏像を寄付。製作の過程でも、杉山さんは常に「この仏像は誰のために作るのか」を考えています。木を彫るとき、杉山さんの動作には、他者を想う祈りの気持ちが込められています。
仏教には「利他(りた)」という重要な考え方があるそうです。利他とは他人の幸福を願うこと。杉山さんは自身の経験を踏まえて「自分の欲のために生きていても上手くいかない。まずは人の役に立つこと、そして人の喜ぶ姿をみることで自分も嬉しい気持ちになります。歳をとると仏教の教えが身に染みて感じます」と話します。
また杉山さんは千代田町の文化協会の会長も務めています。「まずは高齢者の方が人と関わり、新しいことにチャレンジすることが大切だと思います。高齢者が輝ける町を作り、活動的で健康になれば医療費の削減などにも効果があると思います。他者のために尽くすことが、自己の成長にも繋がり、結果として利他の考え方へと繋がっていきます」と語りました。
※仏師…仏像を作る工匠。
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