■「前原準一郎と生活改善運動」
『新編 桐生市史』編集委員 近現代部会長 宮﨑俊弥
前原準一郎(明治12~昭和39年)は、明治時代から桐生の機械工業をリードしてきた桐生製作所(後の桐生機械)を創業し、発展させた人物です。
昭和16(1941)年に同社の社長を退任した前原準一郎は、戦後、全国的に行われた生活改善運動に尽力しました。生活改善運動とは、これまでの古い習慣を見直し、戦後の民主主義にふさわしい社会生活を目指した運動です。桐生では桐生市社会教育協会(昭和22年設立)の中の生活改善委員会が中心となって運動を展開し、前原準一郎はその委員長として同会を指導しました。
前原千明家資料によれば、前原準一郎は地元の新聞などに自らの意見を数多く投稿し、市民に対して生活改善の啓発活動を行い、これらの意見を集約した「これからの社会生活」という冊子を桐生市社会教育協会から昭和26(1951)年12月に発行しました。
この冊子には「時間と寿命」や「民主的な会食」など、合計25項目の生活改善の意見が分かりやすい表現で述べられています。ここには「幸福で円満な社会生活には人への思いやりが大切」「無駄を省き能率的な日常生活を送る」という前原準一郎独自の考え方を見ることができます。
また、円満寺にある前原準一郎の墓碑には、「生き甲斐=世のために尽くす度合を大きく自分のためにする度合を小さく」と彼の言葉が刻まれています。
近現代部会では今後も桐生で多彩な活動を行った人物について、調べていきたいと思います。
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