『新編桐生市史』編集委員 民俗部 会長 永島政彦(ながしままさひこ)
■「賀茂神社の御篝(みかがり)神事」
桐生市には、多くの伝統的な祭礼や行事が残されています。広沢町六丁目の賀茂神社で毎年2月3日の節分に行われる御篝神事もその一つです。御篝神事は「賀茂の火投げ」ともいわれていて、境内で東西に分かれた若者が、火のついた薪まきを投げ合う勇壮な行事です。
神事はまずお焚(た)き上げから始まります。境内の注連(しめ)縄を張った一角に、各家から持ち寄った正月飾りや古いお札、だるまなどを小正月のどんど焼きのように積み上げます。参拝者は名前と年齢を書いた紙の人型を供え、神官が祈とうをした後、火を付けます。人型を燃やすことで厄を払うといわれています。
このお焚き上げの火を種火として、薪に火を付けます。この薪は数日前に山から切った生の木です。しばらく火にくべると、炭となってくすぶるような状態になります。この薪を、若者が太鼓の合図で投げ合います。暗い夜空に光が尾を引くように飛び、地面に落ちると火の粉が飛び散ります。火や火の粉には災いや魔を払う力があるといわれます。
御篝神事は、地域の住民たちが息災な生活を願って、今日まで受け継いできた行事であり、平成3年に桐生市指定重要無形民俗文化財になりました。民俗部会では、地域の伝統的な行事や祭礼を調査していきたいと考えています。
問い合わせ:市史編さん室
(【電話】47-7335)
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