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自治体の皆さまへ

常陸大宮市史編さんだより Vol.81

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茨城県常陸大宮市

◆『常陸大宮市史 資料編2 古代・中世』の刊行
常陸大宮市史編さん委員長(古代中世史部会長)
茨城大学人文社会科学部
高橋 修教授

平成の大合併後に発行される、県下では初めての本格的な自治体史である『常陸大宮市史』の資料編2古代・中世が、当初の計画通り、今年3月に刊行されました。編さんには7年の歳月を要しました。本文857頁に及ぶ大変なボリュームの史料集です。
第I部には、年代を追って市域にかかわる古代・中世史料を収めました。何といっても常陸を代表する武家・佐竹氏の史料を網羅(もうら)できたことが特筆されます。
市域に本領をもつ岩瀬与一太郎(よいちたろう)や小貫氏、高部氏といった武家の史料、現在の市街地を舞台に展開した部垂(へたれ)の乱関係の史料など、丁寧な解説をつけて収録しています。
市域に出自をもつ、あるいはその事跡が常陸大宮市の歴史と深くかかわる重要人物の史料をまとめて翻刻(ほんこく)(※)した第II部は、他の自治体史にあまり例がみられません。浄土真宗の教祖・親鸞(しんらん)については、二十四輩に象徴される弟子たちに焦点を当てて史料(資料)を集めました。「浄土宗中興の祖」と仰がれる聖冏(しょうげい)や、室町時代の画僧・雪村周継(せっそんしゅうけい)についても取り上げています。
第III部に市域の古代・中世に遡る文化財に関する情報を集成できたことも、本書の大きな特色です。中世の棟札は54点が翻刻されています。中には系図でしか知られていなかった武士の名が記されたものもあります。寺社縁起は79点を収めました。古代・中世に遡る創建・中興伝承という、新たな研究課題を提起しています。縄張図とともに収録した中世城郭は105ヶ所に及びます。市域の豊かな自然の中にこれだけたくさんの遺構が眠っているのです。
古代・中世の史料の中には和製漢文で書かれているものもあり、簡単に読みこなせるものばかりではありません。現代語訳や読み下し文の方がわかりやすくてよい、という意見もあるでしょう。しかし古文書や古記録は、専門家の間でも解釈はもちろん読み方さえ意見がわかれるのです。そのためできるだけ原文のまま翻刻し、「どう読むのか」は読者に委ねるのが学術的な態度と考えます。もちろん我々の役目は刊行して終わりではありません。引き続き、講演会やセミナー、現地講座など、市民の皆様に資料編2を読んでいただくための様々な事業を展開していきたいと思います。引き続き市史編さん事業にご支援をお願いします。

(※)翻刻…くずし字で書かれている古文書を活字化して読めるようにする作業

問い合わせ:文化スポーツ課 文化振興グループ
【電話】52-1111(内線343)

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