◆弥生の墓
現在、歴史民俗資料館では、山方地区の中台遺跡と小野地区の小野天神前遺跡発掘調査で発掘された、弥生時代のお墓についての企画展「弥生の墓」を開催しています。
お墓の遺跡は、考古学においてとりわけ興味深い課題です。なぜなら、文字記録がない大昔の人々が、身近な人の死を悼み、あの世へ送るために行った様々な儀式の痕跡を、彼らが自らの手で地中に封じ込めた、いわば死者への思いを詰め込んだまま数千年の時を超えたタイムカプセルなのです。
とはいえ、日本の土壌では、有機物はほぼ溶けて無くなってしまっていますので、とても慎重に発掘し、当時の様子を推測する必要があります。
常陸大宮市の弥生時代のお墓といえば、市内唯一の国指定史跡である泉坂下遺跡に代表される「再葬墓」遺跡です。再葬墓とは、一度土葬などで埋葬してから、骨になった後に壺などに入れて再び埋葬したお墓です。壺がまとまって沢山埋められている状態で発掘され、中台遺跡と小野天神前遺跡でも見つかりました。
またこれと同時期に、土器棺墓というお墓もあります。骨にせずにそのまま土器を棺(ひつぎ)として利用したお墓のことです。主に幼児などが納められたと考えられていて、縄文時代から、再葬墓が造られなくなった弥生時代中期以降も継続する墓制です。
再葬墓と土器棺墓は、土器が地中に納められている点では同じため、区別が難しかったのですが、山方地区の中台遺跡では土器棺墓である可能性が高い墓群が発見されました。
調査を重ねることで、少しずつ分かってくることもありますが、新しい謎も掘り出されます。
小野天神前遺跡の再葬墓に、なぜか逆さまに置かれた土器があったり、中台遺跡では、見たことのない形の土器が発見されたりしています。
現代を生きる私たちのお葬式は、すっかりシステム化されていますが、それでも故人を見送るために様々な手順を踏みます。弥生時代の人々の葬送とは全く違う点もあれば、共通点を感じることもあると思います。ぜひ皆さんの目で見て弥生人の心を感じてみてください。
企画展「弥生の墓」は12月15日(日)まで開催中です!
(歴史民俗資料館 中林 香澄)
問い合わせ:歴史民俗資料館
【電話】52-1450
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