■継承
武双山と雅山二人の大関を輩出した名門・水戸農業高校相撲部
▽想(おも)いを受け継ぐ孤高の力士
・清水 毅史さん
水戸農業高校相撲部(2年)
水農の相撲場では、小学生から大人までが一緒になり、指導者の掛け声のもと、腰割りや四股、すり足などの基本運動を一時間以上かけて入念に行い、全員の体から玉のような汗が吹き出ています。
熱気がこもる場内において、一人黙々と励んでいるのが、相撲部で唯一の男性部員、清水毅史さん(2年)です。清水さんは、国体強化指定選手の候補に選ばれ、二子山親方(雅山)が稽古を見に来るほど注目されています。清水さんがこれほどの実力をつけた理由は、どこにあるのでしょうか。
副顧問の阿部穂高先生は、「とにかく真面目で努力家。常に向上心を持ち続けており、どんな稽古も決しておろそかにすることはしない。」と高く評価します。
体と体が激しくぶつかり合う相撲においては、特に下半身が重要。四股などの基本運動を毎日続けていくことで、下半身が鍛えられ、ぶれない体となり、上体の力を活かすことができるようになります。清水さんは、この基本運動の重要性を理解し、日々稽古に励んでいるのです。
また、相撲部OBの存在も欠かせません。
部員が少ないため、平日は筋力トレーニングが中心となりますが、週末には経験豊富なOBたちの胸を借り、体のあたり方や圧力のかけ方などの実戦的な技術を身につけます。
「相撲は体だけでなく、心を鍛えるもの。厳しい稽古をとおして、上下関係や礼儀が学べます。人として大切な精神を身につけることができるスポーツです。」と話すOBの田上慎司さん。自分たちと同じように相撲に情熱を注ぐ清水さんを厳しく、そして優しく見守ります。
清水さんは、「今の自分があるのは、支えてくれた人たちのおかげ。大きな大会に出場して、もっと実力をつけていきたいです。そして、ここで学んだことをいかして人に尽くせる人間になりたいです。」と力強く話しました。
常陸山が目指した力士のあるべき姿が、水農相撲部にもしっかりと受け継がれている。
通算幕内成績150勝15敗22引き分け2預かりという驚異的な記録を残した常陸山は、大正11年6月19日、48歳の若さでその生涯を閉じる。
長年の相撲界の功績により、相撲協会は、史上初の協会葬を国技館で行った。
常陸山は、現役時代から弟子の指導を任され、事実上の親方であった。その指導は、厳しいものであったが、それは大切な弟子たちに大けがをさせたくないという親心からくるものであった。
常陸山は、故郷・水戸を愛する人でもあった。大正7年に起きた水戸の大火災では、一日も早い復興を願って水戸で巡業を行ったほか、備前堀に架かる古い橋を私財を投じて架け替えるなど、力を注ぐことを惜しまなかった。
人に敬われる行動を取ることで、人間的に強くなり、力士として強くなる。
「力士とは力の士(さむらい)である―。」
その精神を持ち続けた常陸山だからこそ、今もなお、「角聖」として語り継がれているのである。
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