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SDGsで共に創る持続可能な行方 第30回

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茨城県行方市

■賃金とSDGs
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里

1.SDGsの「繁栄」、目標8と賃金
「繁栄」(prosperity)は、SDGsを含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の柱である「5つのP」の一つです。ここでは「我々は、すべての人間が豊かで満たされた生活を享受することができること、また、経済的、社会的及び技術的な進歩が自然との調和のうちに生じることを確保することを決意する」、と述べられています。
これを具現化したものの一つが、SDGs目標8(経済成長と人間らしい仕事)です。賃金に関係するターゲット8・5では「2030年までに、若者や障害者を含むすべての女性と男性にとって、完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を実現し、同一労働同一賃金を達成する」、とされています。

2.国際比較でみる日本の賃金の推移
私たちが豊かな生活を送るうえで、賃金はとても重要です。では、賃金の推移を国際比較でみてみましょう(図)。1991年を100とした場合、2020年までの30年間で、G7先進諸国において、どのように名目賃金が推移したのでしょうか(厚生労働省2022)。アメリカは278・7と約2・8倍弱に増えており、イギリスの約2・6倍がこれに続きます。他の先進諸国もおおむね2倍程度に増えています。2020年は新型コロナ禍で落ち込んでいる国も多いですね。これに比して、日本は111・4つまり、過去30年間で名目賃金は約1・1倍程度しか上昇していないことになります。
厚生労働省の別のデータで物価上昇分を加味した実質賃金でみますと、日本は1991年を100とした場合、2020年には103・1つまり、約3%の上昇にとどまります。コロナ禍前においても、おおむね100前後で推移しており、この30年間で実質賃金がほとんど上昇していないことがわかります。実質賃金の推移をみると、イタリアは日本とやや似ていますが、他のG7諸国は2020年で146・7(アメリカ)~129・6(ドイツ)とおおむね右肩上がりとなっています。

3.ポスト/ウィズ・コロナと賃金
ポスト/ウィズ・コロナにむけて、私たちの暮らしを回復していく上では、経済成長と人間らしい雇用そして賃金の上昇はとても重要です。前回(第29回)の連載で、日本は男女ともに先進国の中で最も労働時間が長い点を説明しました。にもかかわらず賃金が伸びないのは由々しき事態ではないでしょうか。
新型コロナ禍やウクライナ危機等の影響によるグローバルなエネルギー・食料価格の高騰を受け、日本でも消費者物価が上昇しています。2020年を100とした場合、2023年2月は104つまり4%の上昇です(総務省2023・5)。2000年~2019年の日本の消費者物価伸び率は約0・1%というデータもあり、近年の物価上昇は極めて急激です。この状態で名目賃金が上昇しないと、実質的に賃金が目減りすることになり、コロナ禍からの復興の足かせになりかねないと危惧されます。

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