■地域文化と持続可能性に向けて(大宮神社例大祭を事例に)―学生のSDGs視点から(3)
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
前回に続き「行方市SDGsフィールドワーク2023」を通じた、本学学生の考察についてご紹介させていただきます。市民の皆さんのご参考になれば幸いです。ご協力をいただいた大宮神社関係者および関係各位に、心より御礼申し上げます。なお、学生による原文を尊重し、必要な編集を行っております。
1.地域と祭りのつながりと持続可能性
地域と祭りのつながりは強い。大宮神社例大祭は行方市の玉造地区で行われる祭りで、周辺の地区からの参加もある。地域の祭りは地域コミュニティの活性化や再構築に寄与すると考えられる。大宮神社例大祭は山車の準備に始まり、住民をはじめとした「人」との関わりが深い祭りである。しかし、社会の変化により、祭りやコミュニティへの意識が薄れつつあり、持続性が懸念されている。
地域に根ざした祭りを通じて、人と人とのつながる機会を意識してつくり出すことは、祭りや文化の継承だけでなく、地域コミュニティの持続可能性にも貢献できると考える。具体的には、子どもたちが実際に山車の飾りつけに関わる等の活動参加は、地域コミュニティの理解促進につながるであろう。また、学校等での探究活動における住民への訪問調査や発表などを通して、学びを深めることも重要であろう。(4年生、女性・3年生、女性)
2.社会的・経済的つながりと持続可能性
地方の祭りの持続可能性について、気になるキーワードとして「持続性」「収入」を挙げたい。大宮神社例大祭でも、祭りを持続可能にしていくためには、経済面での課題があることがうかがえた。
少子高齢化が進む行方市では、地域住民の寄付だけで祭りを運営する現在の方法では、持続的であるとは言えない。社会的・経済的なつながりが強い鹿行地区へとコミュニティの輪を広げ、また官民連携や観光化等を通して、祭りを持続的に運営するための、経済的な基盤を作っていく必要があろう。(3年生、女性)
3.帰属性、主体性と持続可能性ー都市部との比較
私の出身地である都市部の祭りでは、多くの屋台が並び、それを市民が回って楽しむことが主であり、地域コミュニティが明確な祭りの担い手として見えてこない。これに対し行方市の祭りは「総踊り」「のの字廻し」「総曳き」など、住民参加のメインイベントがあり、地域コミュニティが主役を担っている。ここには「参加者が共に楽しむ」という強い意図が存在し、これにより市民の地域に対する帰属意識や、地域の行事である祭りを地域住民自身が盛り上げるという主体性が育まれると考えられよう。
こうした帰属意識や主体性は「地域コミュニティの持続・強化」に強く結びついており、地域の持続可能性の向上に大きな役割を果たす。人口減少などさまざまな課題がある中で「祭り」と「地域」の強い結びつきを維持することは、極めて重要である。(4年生、男性)
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