■絵葉書にするなら…
スマホでの撮影・保存が主流になる前、写真といえば撮影したフイルムを写真店などに持ち込み、現像とプリントを依頼するのが一般的で、たいがいは写したものを全部プリントしてもらったものだ。
そのこともあるだろう。捨てることが苦手な母は、大量の写真を残した。
大きくて重いタイプのアルバム(それが何個も!)に、年月や出来事メモと共に貼ってある。それらを私の家で保管するにあたり、先日、整理作業(今どきのコンパクトなファイルに移す)に取り掛かった。同じような写真、撮り損じたような写真は思い切って大幅に処分しよう、と心に決めて。
しかし。整理が終わってみれば結局、一枚も捨てていなかったのだ。どうでもいいような写真も、いや、だからこそ撮った時の気持ちや状況をあれこれ想像できて大切に思えてきたから。
私は、小学5、6年生の頃、自分宛てに何回か絵葉書を送ったのだった。官製ハガキにちょっとした絵を描いて。それが届くとわくわくして「あら、どこのどなたからかしらん」なんて独りごちて、それからしばし眺めた。
この、自分に絵葉書を送る遊びを、久しぶりにやってみたくなった。送る絵葉書は、母が「平成十一年二月二八日婦人会ドーム見物ラン展」と題した何枚もの中の、ランではない花を接写して失敗した感じの一枚で作成したい。間近で写したくなった理由をあれこれ考えるのがたのしい。もしかして香りに感動したのかも。フイルムが余って適当に撮っただけ?
ところで、行方市で新しく絵葉書を売り出すなら「水と緑」(昔の茨城国体のキャッチコピーにちなんで)をテーマに選んだ写真を五枚セットなどでどうだろう。行方産野菜をボタニカルアートタッチで描いたものなどもいいかも。企画せよなんて、誰にも言われてないのだけど。
●小林光恵さん
「じゃーぼ」って行方市の何割くらいの方が意味をご存じでしょうね
行方市出身。つくば市の洞峰公園そばに在住。武田百合子さん(大ファンです)の作品に『絵葉書のように』(中公文庫)という随筆集があります。市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。
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