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なめがた大使小林光恵さん書きおろしエッセイ 五感でキャッチ!なめがた漫遊記 第7回

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茨城県行方市

◆よく来たね
私を含む大人四人と幼稚園児S君とでお出かけ。全員が乗った車中でしりとり遊びをはじめた。〇〇しばり、などにはせずに。
S君は自分の番になると「うーん」と言って言葉を探し出す。それを受けて大人たちは「ほら、S君が好きな果物とかさあ」とアシストを始める。
座席の関係でS君の姿が見えない私は、考え込んでいる様子を想像しながら、胸の中で善戦を称えた。大人びた言葉を発することが時にあるものの、語彙は年齢なりなわけで、同乗の大人たちに比べて圧倒的に言葉の量が少ないのだから。
と、そこまで考えてハッとした。私も行方市について知る量がたいへん乏しいってことなんだなと。
実はこの数日前に、私は行方の地区名しばりで、しりとりを頭の中でやってみたのだ。するとぜんぜんうまくいかない。行方→玉造→り?で止まってしまい、別の「た」始まりの地区名も思い出せない。これは加齢のせいで俳優の名前が思い出せない(三日後に思い出したりする)ことと同じだな、と考え、なんとか自力で地区名を思い出そうとした。
しかしダメで、仕方なくネットで確認すると、たではじまる地区名は玉造だけだったのだ。思い出せるはずがないわけだ。そもそも地区名は、数的にしりとりには無理があることにも気づかなった。遅まきながらこれからしっかり行方の地区名を覚えます!
さて、車中でのしりとりは続きS君に「よ」が回ってきた。「うーん」が聞こえてきて、大人たちのアシストが始まりそうなその刹那に、S君はポンと言った。「よく来たね」と。
単語ではなく、まさかの文節返し。楽しい感じの声色。誰かにそう言われて嬉しかった記憶があるのだろう、たぶん。なんだか、グッときました。
ハッとしてグッときた、秋の日曜日。

◇小林光恵さん
行方にまつわるなんでも、のしりとりなら、農作物とか建物名とか、風習とか、地元言葉とか、行方らしさが見えてきそうです。
行方市出身。つくば市二の宮在住。秋があっという間に過ぎてしまい、金木犀の香を感じたのはたった一日でした。冬の朝のにおいを味わうために12月には早起きしてみようと思います。
市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。

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