対談・(株)ima内田康隆ディレクター
―「AI×霞ケ浦シラウオ」プロジェクト
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
皆さま、明けましておめでとうございます。おかげさまで、2025年のスタートとなる1月に、本連載の第50回を迎えることができました。心より感謝申し上げます。持続可能な地域と地球の未来に向けて、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
新年初の連載は、行方市SDGsキーパーソン対談の第2回目になります。霞ケ浦シラウオのブランド化に取り組む株式会社ima(あいま)ディレクターの内田康隆さまにお話をお伺いします。
■霞ケ浦シラウオの課題とプロジェクトがめざすもの
野田 霞ケ浦の豊かな恵みは行方市の宝です。SDGsのターゲット15・1には「内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する」とあります。
霞ケ浦は全国第2のシラウオの特産地で、市としてもなめがたブランド戦略会議を中心に取り組んでいます。御社が行方市と協働する「AI×霞ケ浦シラウオ」プロジェクトの目的や課題解決について教えてください。
内田 弊社は起業家として課題を解決するために、“あいま”を取り持ちます。匠(たくみ)の持つ技術や要素を分解し、ビジネスの観点と最新テクノロジーの観点から、「未来とのあいまを繋ぐ」事業を展開しています。私自身、筑波大学・同大学院を経て、つくば市役所に入庁、現在もつくば市在住で、茨城とはご縁が深いです。
事業の目的としては、AI技術による鮮度判定で、霞ケ浦シラウオの高付加価値化を図ります。これにより高単価での取引を実現し、取りすぎを抑えながらも漁業家の所得を向上させ、サステナブルな漁業の実現を目指します。
霞ケ浦シラウオが直面する課題としては市場がなく、つくだ煮等の加工用に買い取られているため価格のコントロールがしにくく、漁獲量を増やさざるを得ない等があります。これにより、シラウオの鮮度・商品価値の低下、漁業資源の枯渇そして漁業者の売り上げ・利益の減少といった、負のサイクルが生じています。
■高品質化・高付加価値化と霞ケ浦シラウオならではの特別感
野田 プロジェクトの進捗(しんちょく)はいかがでしょうか。
内田 従来、シラウオの鮮度判定は漁業者の「目利き」でしたが、2021年よりAI技術によってS~Cの4段階で鮮度を判定し、信頼度は80%まで向上しました。高鮮度のシラウオを都内の高級飲食店を中心にサンプル提供し、これまで延べ13店舗の取引先を開拓しています。
また、2023年からは鮮度保持や品質の判定・分類基準の整備をしています。こうした取り組みにより、販売価格はプロジェクト以前から比べると4~5倍となりました。2024年からはブランドセンターを立ち上げ、シラウオの水揚げ以降の処理を一貫して行っています。
野田 最後に、今後の展望について教えてください。
内田 霞ケ浦シラウオならではの「特別感」を大切にしたいです。他の産地と漁の期間が異なるだけでなく、汽水域とは異なる淡水シラウオはonlyoneといってよく「霞ケ浦のダイヤモンド」とも称されます。私も漁師と早朝の漁に出る機会があるのですが、霞ケ浦の朝日に輝くシラウオを見るのは特別な体験で、ぜひ多くの方にも味わっていただければと思います。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>