■磨製石斧(ませいせきふ)と樹木の関わり~諏訪ノ上(すわのうえ)遺跡(深江町)~
縄文人・弥生人が使った道具に「磨製石斧」と呼ばれるものがあります。砥石によって研ぎだされた鋭い刃部をもつ石器で、主に柄を取り付けてオノとして用いられたと考えられます。
金属もまだ普及していなかった縄文時代や弥生時代前半期においては、樹木の伐採と木材の加工にもっとも威力を発揮したであろうと考えられるのが磨製石斧です。
深江中学校のテニスコートに隣接する諏訪ノ上遺跡は、今から約2,600年前の遺跡で、まだまだ石器に頼った生活が行われていました。ほ場整備に伴う発掘調査が行われ、6点の磨製石斧が出土しています。それらを観察すると、削る道具としてノミのようにして使われたと考えられる小型の1点を除いて、他の5点はすべて破損した状態です。このことは、何度も何度も木の幹や枝などに打ちこむ作業が行われたことを意味します。割れるくらいですから、打ち込まれるたびに相当な衝撃が加わっていたのでしょう。
こうした状況は諏訪ノ上遺跡にかぎったことではありません。遺跡の発掘調査で出土する磨製石斧の多くが完形ではなく、折れたり、刃が欠けたりした状態で出土します。木という素材は、軽さのわりに強度があり、加工しやすいというその特性から、原始古代のみならず現在に至るまでさまざまな場面で利用されてきましたが,磨製石斧は縄文・弥生時代の人間社会と樹木との密接な関わりあいを示す遺物といえるでしょう。
遺跡で出土する遺物もただ単に壊れているもの、不完全なものとして見るのではなく、どうしてそうなったかを想像することで、私たちは数千年前、数百年前に生きた人々の生活により間近に迫ることができます。そういったところも考古学の醍醐味です。
▽8月~9月の小企画
日時:8月1日(木)~9月30日(月)午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※休館日…火曜
場所:深江埋蔵文化財・噴火災害資料館
料金:一般…200円/高校生…150円/中学生以下…無料
※団体割引あり
※企画展は入館料のみでご覧いただけます。
問合せ:文化財課(南有馬庁舎)
【電話】73-6705
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