■広域的な文化交流の証拠を示す「夫婦石(めおといし)遺跡」
夫婦石(めおといし)遺跡(上県町久原(くはら))は、縄文時代中期(約5,000年前)の遺跡です。主な遺物として、縄文土器(阿高式(あだか))と大陸系の櫛目文(くしめもん)土器が出土しています。
阿高式土器は九州北西部に広く分布する型式で、粘土に滑石の粉末を混入して土器全体がにぶい光沢を放つものや、土器底部にクジラの脊椎骨の痕が付いているものなどがあり、朝鮮半島南海岸の遺跡でも類似土器が確認されています。
一方、櫛目文土器はユーラシア大陸北部の新石器時代(※)によく見られるもので、櫛のような道具を用いて幾何学文様が施されているのが特徴です。ロシア・ボルガ川上流で発生してフィンランドやモンゴル、中国東北部、朝鮮半島など広範囲に広がっています。また、その後の九州縄文土器の特徴に影響を与えた可能性が考えられていることからも、櫛目文土器文化が世界史に与えた影響の大きさをうかがい知れます。
夫婦石遺跡では縄文土器の出土はごくわずかで、ほとんどが櫛目文土器でした。これらのことから、この地の人々は海峡を越えて大陸文化や九州縄文文化との広域的な関係を持ちながら暮らしていたと考えることができます。
※「新石器時代」…日本の縄文時代に相当
次回は、対馬最古の畿内型古墳「出居塚古墳」を紹介します。
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