■仲間と伴走し実現した循環型農業経営
岩下拓史(いわしたひろし)さん(45)
株式会社LIBRE. 代表取締役
様々な職種を経験した後、2018年9月に元同僚の大浦恵美子(おおうらえみこ)さんと、共同経営の形で『株式会社LIBRE.』を立ち上げる。個性的な社名の由来は、ずばり「自由」。従来の考え方にとらわれない自由な発想で農業に取り組むという意味も込めて、キューバ革命で民衆達のスローガンになっていた「Viva Cuba Libre(自由なキューバ万歳)」から命名。現在は元同僚2名を含む総勢5名で日々奮闘中。
▽前職場で目覚めた起業への道
私が循環型農業をベースとした起業を目指した理由は、前職の会社での経験が大きなきっかけです。前職ではブナシメジの生産販売の営業をしていました。その会社ではブナシメジの生産後に出る使用済み培地を「ぼかし肥料」(※本紙P4参照)に変え、それを元肥として野菜を栽培するという独自の循環型農業を実践していました。この取組を通じて、農業の可能性と重要性を実感し、農業で貢献したいと強く思うようになりました。さらに前職の社長が持っていた農業に対する熱意と取組方には大きな影響を受けました。社長は農業を単なる生業と捉えるのではなく、地域社会や環境との共生を重視しており、その姿勢に触発され、私も自らの手で循環型農業を実現しようと決意し、独立の道を選びました。前職での経験と学びを活かし、魅力たっぷりでとてもお世話にもなってきたこの西海市で、持続可能な農業を目指して挑戦しています。
▽これまでの経験を生かした同僚との共同経営
私が起業を考えた時、自分の力だけでは野菜の生産が心許ないなと感じていました。経営や営業に関しては経験があったのですが、生産に関しては素人同然だったのです。そこで、野菜の生産を熟知していて、信頼できる人との共同経営を思いつき、今の共同経営者の大浦恵美子さんに相談し、快諾していただきました。大浦さんは西海町の出身。地域の事もよく知っていて、前職では仕事ぶりが評価されて、農場長を務めるほどでした。
私は営業職として直接販売の重要性を、そして大浦さんは生産現場での経験から、野菜の質と生産効率を追求することの重要さを理解していました。それぞれの専門分野で培ったスキルと知識を持ち寄り、補完し合うことで、より効果的な経営を実現できると考えました。これにより、農業の可能性をさらに広げ、さらに農業を基幹産業としているこの西海町で、地域社会に貢献する取組を加速できると感じています。
「私たちが持っている販路を生かして、西海市の特産品であるみかんの販売も行っています。西海産のみかんはとても美味しいのですが、規格外品などは、なかなか販路が見つかりません。そこで、私たちが販売のお手伝いをさせていただいています。規格外品でも味は最高なので、お客さんもとても喜んでいます。今後はみかん以外にも挑戦していきます。」
[6次産業とは]
農林漁業(1次産業)に、加工(2次産業)や販売(3次産業)を組み合わせ、生産から販売まで一貫して行うことで付加価値を高め、地域の経済を活性化させるビジネスモデル。
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