◆国際政治学~より良い世界を次世代に引き継ぐための研究
国際社会学部 国際社会学科
笠原敏彦 教授
私の研究分野は、国際政治です。シーボルト校に着任したのは2017年で、それ以前は新聞記者として主に国際報道に携わり、ロンドンとワシントンに計11年駐在しました。前職の経験から、国際政治でも特に英米両国の政治・外交を専門とし、「戦争と平和」の問題にも関心があります。と言うのも、新聞記者時代にアフガニスタン戦争や旧ユーゴスラビア紛争などを現地で取材した体験が強烈に脳裏に焼き付いているからです。電気も水道もなかったアフガンの厳冬期の取材では、ロンドンから自家発電機を持ち込み、寝袋にくるまりながら「人はなぜ戦争をするのか」と考えていました。記者として多くの国々、様々な問題を取材する機会に恵まれ、今は実務経験教員として現場で感じた疑問に自らの回答を探しているというのが私の「国際政治」研究です。
皆さんは、国際政治を学ぶ意味はどこにあると思いますか。「戦争と平和」の問題に関して言うなら、戦火の絶えない世界の現状を見ていると、これは人類にとって永遠の問題のようにも見えます。国際政治を研究する意味などあるのか、と疑問に思うかもしれませんね。しかし、永遠の問題のように見えても、一歩ずつでも問題の解決(=より良い世界)へ向けた努力は続けなければなりません。例えば、ロシアが2022年にウクライナに侵攻したことで始まった戦争では、侵攻に至るまでの経緯、外交プロセスを分析して教訓を引き出すことで、将来の紛争防止に役立つかもしれません。そうした地道な研究の成果を蓄積していくことが、平和な世界を追求する「人類の叡智」となっていくのではないでしょうか。親の世代から受け継いだ世界を、いかにより良い世界にして子どもの世代に引き継いでいくのか。国際政治学とはその一助となるべきものだと思います。
現在は「二つのアングロサクソン国家」とも呼ばれるアメリカとイギリスの同盟関係の変遷と、その関係が世界に与える影響について研究しています。
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