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自治体の皆さまへ

[特集]「あたりまえの安全」をつくる人々(1)

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長崎県長崎市

-イノシシから住民を守るために-

近年、日本の都市部で新たな問題が生まれています。
それは住宅地などでのイノシシ被害の増加です。
かつては農業地域で見られることが多かったこの被害が、今や都市部でも頻繁に報告されています。
今回はイノシシ被害から地域を守るために尽力している方々の取り組みや思い、イノシシに遭遇したときの対処法をご紹介。
今は大丈夫でも、明日遭遇するかも。事前に備えておきましょう。

■本市でも住宅地などで被害が
本市でも、イノシシにより農家の畑が荒らされる被害は減少傾向にある一方、高止まりしているのが「生活環境被害」。市内全域で、庭や公園などの掘り起こしや車との衝突が起きていて、イノシシの出没による不安が高まっています。この要因は、生ゴミを漁ることで、人間の食べ物の味を覚えた個体が増えたことなどであると言われています。

▽被害相談件数の推移

イノシシ対策では「防護」と「捕獲」をして、人とイノシシがうまく住み分けるようにすることが大切です。市では、イノシシが出没する経路をワイヤーメッシュ柵(イノシシ侵入防止用の金網の柵)で遮断する「防護対策」、人里に慣れてしまったイノシシを優先的に捕獲する「捕獲対策」を進めています。

■長年の経験と技術で地域を守る猟師
長崎市猟友会 木下さん
市内には2つの猟友会があり、そのうち約280人の会員が有害鳥獣捕獲に尽力しています。木下さんは現在80歳で現役です。

▽地域のために毎日活動
私は早坂町から茂木町にかけての地区でイノシシの捕獲をしています。箱罠などの罠を山に仕掛けてイノシシを捕獲し、食用としていただくか、焼却したり埋めたりして処理しています。罠作りから仕掛けまで全て1人で行っています。
狩猟免許は20代の頃から持っていました。イノシシ捕獲を始めたのは約30年前。イノシシに困っている人から助けを求められたことがきっかけです。農家のビワやナシの実を食べたり、民家の庭を荒らしたりするなど深刻な被害を受けていました。
イノシシ捕獲の難しいところはその学習能力です。イノシシは私の匂いを覚え、私が森に入ると数日間は活動しなくなり、罠を回避するようになります。イノシシの動きを把握するために、毎日山を歩きまわって、山に残った足跡や形跡を見つけ、ノートに記録しています。これにより、動きを把握した上で罠を2重、3重に仕掛けることができます。
私の連絡先をいろんなところに掲示しているので、地域の方々が有害鳥獣に困った時の窓口として頼りにしてもらっています。地域を歩くと、農家や地域の方々から「ご苦労様です」「おかげでイノシシに悩まされることがなくなり、本当に助かります」と感謝の声をいただきます。食べ切れないくらいたくさんのミカンやビワをいただくこともあります。皆さんの生活を守ることが私の生きがいなんです。もうすぐ81歳になりますが、元気な間は続けていきたいです。

■組織で協力して地域を守る人たち
◆千々地区捕獲隊
本市の捕獲隊の先駆けとして、平成25年に結成。メンバーは10人ほどで、隊長の小川さんと事務局の三浦さんを中心に千々地区で活動中。

▽「捕獲隊」とは
狩猟免許所持者の指示のもとで、免許を持っていない人も有害鳥獣の捕獲の補助(罠の見回りやエサの交換など)ができる制度を活用して、市から許可を受けて有害鳥獣捕獲を行う組織。

Q.普段はどのような活動をしていますか。
A.仕掛けている箱罠にイノシシが掛かっていないか、ワイヤーメッシュ柵が壊されていないか、見回りをしています。結成当初は有害鳥獣相談センターの講習会で、イノシシの習性や罠を仕掛ける場所などを学びながら活動していました。今はノウハウが身に付いているので狩猟免許を持っている三浦さんのもと、自分たちだけで捕獲までの活動をしています。
Q.活動の効果はありましたか。
A.以前に比べてイノシシ被害は減りましたし、捕獲する数も少なくなりました。活動前は畑を掘り起こされて原形が変わってしまったり、道路の下を掘られて崩落の危険が高まったりと、被害を受けたかたは本当に困っていました。活動していて良かったと思います。

◆横尾小学校区コミュニティ連絡協議会 安心・安全部
平成30年の協議会設立時に、住民から「イノシシ対策をしてほしい」と声が上がったため、有害鳥獣相談センターの助言を受けながらイノシシ対策に挑戦。

Q.どのような思いでイノシシ対策に取り組んでいますか。
A.自治会で作っていた畑が荒らされたり、イノシシが横尾小学校の近くに出没して、姿は見えないが鳴き声が聞こえたりもしました。「横尾っ子に何かあってはいけない」と、子どもを守るために「イノシシ対策プロジェクト」に取り組んでいます。子どもたちの安全が一番大切です。

Q.協議会で行った対策を教えてください。
A.約5年かけて横尾地区周辺の山沿いをワイヤーメッシュ柵で囲いました。イノシシがまちにおりてこないようにして、地域を守っています。安全な状態を保つためには柵の保守点検が欠かせません。横尾小学校から横尾中学校周辺に約160m設置していて、地域の皆さんと協力して点検しています。自治会・育成協・子ども会などさまざまな団体の協力があります。

問合せ:農林振興課 
【電話】820-6564

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