■村上直也隊員
こんにちは。地域おこし協力隊の村上です。いきなりですが大人のみなさん、子どもの頃に作った工作品が家に残っていたりしますか?
僕は小さな頃から工作が大好きで、空き箱や木の枝、かまぼこの板などを使って工夫を凝らした多くの作品を作ってきました。その積み重ねが今、モノづくりやデザインの道を選ぶきっかけになりました。しかし当時作った稚拙な造形のそれらは、数か月、数年後には自他ともに認める「不要なもの」としてごみに出してしまいました。
そんな僕の実家に残っているのは、中学生の頃に技術の授業で「作らされた」なんの工夫もしなかったシンプルな小さい本棚くらいです。中学生当時、将来末永く使えるように意図してシンプルなデザインにしたわけではなく、部活動や別の趣味、交友関係などに夢中になり、授業で工夫を凝らすことをサボり、前に倣えで作っただけです。しかし結果として、なんの工夫もしなかった普遍的な見た目の本棚は暮らしに溶け込み、15年経った今でも生き残ったわけです。
今の自分を作り上げた「子どもが自由な発想で創作すること」の大切さは、自分が何より認識しています。しかし今、木工体験の企画などを任される立場になったとき、「不要なもの」づくりにはなってほしくないと何より意識しています。ただ、実用的なものづくりを目指すと、子どもにとって単調な作業や経験にもなりかねません。
この両立を子どもが意識して判断することは難しく、その機会を提供する我々大人にとっても難しい問題です。また、協力隊のミッション的に行われる木育活動においては、森林資源の活用方法や木材を使うこと自体に興味をもってもらうことを重視する必要があります。
なので僕が任された木工体験では、自由な発想というよりは今後の自由な創作活動の礎になる手段やキッカケを提供できるように、なおかつ大人になっても暮らしの中にできるだけ違和感なく溶け込めるようなものづくりをいつも模索し苦悩させてもらっています。
さて、1月末に子育て大作戦の木工体験として木琴作りのワークショップを行います。今回のワークショップでも、能動的な作業や経験を楽しんだり、なにかのキッカケになるように意識することはもちろん、「体験で作った工作」に留まらず、また「楽器を楽器として日常生活から切り離す」必要の無いようにインテリアとして生活に溶け込み、永く存在してもらえるものになるように努力しようと思っています。
文頭では「子どもの頃に作った工作品」としましたがそれに限らず、身の回りの暮らしのアイテムを選ぶ際に「自分が末永く愛せるもの」かを考える力は大人になってから身につく力かと思います。この小さな認識や大人が子どもたちに提供するキッカケは、今あいまいな解釈で認識されているSDGsの一端を担っていける力になるのでは無いかなと、僕は考えています。
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