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文化なかの「公民館報」No.224 ~ふるさとの歴史

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

■小舘の館は燃えている
小舘の高梨氏館跡。有力な武家の館のはずが、出土品が小破片ばかり。他の中世城館と比べてパッとしないのはなぜだろう。2023(令和5)年8月号の本コラムでは、略奪を受けたのではないかと推測した。今回は、それに関わる資料を紹介したい。

その資料とは、火災の痕跡である。例えば、青磁(せいじ)や染付(そめつけ)の破片の中に、焼けて硬化した土が貼り付いたものがある。釉薬(ゆうやく)も溶け、表面が荒れてボロボロになっている。磁器は丈夫なので、長く土に埋もれていたとしても、こんな状態になるはずがない。火熱を受けて変形したのである。

磁器だけではない。発掘された5棟の建物跡に伴う礎石(そせき)の中に、火熱を受けたものがある。また、北東隅にある掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)(倉庫?)の周辺では、焼けて炭化したコメ、ムギ、マメ類がみつかっている。さらに、表土の下には、焼土が堆積していたという。大規模な火災があったと見てよいだろう。とすれば、16世紀前半のことである。
この火災の原因が焼き討ちであり、そのときに目ぼしいものが持ち去られたとすれば、出土品が小さな破片ばかりというのも納得がいく、というわけである。

とは言え、焼き討ちを裏付ける記録などはない。天災や失火による火災かもしれない。あるいは、何らかの意図で、自ら放火したか。その場合、貴重品などはあらかじめ運び出すだろう。出土品が少ないのも当然か。
略奪説は早くも暗礁に乗り上げてしまった。とにかく、あれこれ考えることが大切なのだ。そう言い訳しておこう。

柳生俊樹
生涯学習課学芸員

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