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特集 中野市と古墳

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

私がご紹介します
生涯学習課学芸員 柳生俊樹(やぎゅうとしき)
考古学専攻。市内にある遺跡(集落跡、古墳、城跡など)の調査・研究と保護に取り組んでいる。

皆さんは「古墳」と聞いてどんなものを思い浮かべますか。古墳とは、土を積み上げて築いた墳丘(ふんきゅう)を備える大型の土木構造物で王や豪族といった地域社会の有力者を葬った墓です。3世紀の後半頃(今から1700年余り前)から8世紀初頭(およそ1300年前)まで、北海道と沖縄を除く日本列島のほぼ全域で、盛んに造られました。
2019年に世界文化遺産に登録された、全長500メートル近い超巨大古墳、仁徳天皇陵(にんとくてんのうりょう)古墳(大阪府堺市)のことなど、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。県内では、森将軍塚(もりしょうぐんづか)古墳(千曲市)や桜の名所でもある弘法山(こうぼうやま)古墳(松本市)に行ったことがある方もいるでしょう。
ところで、中野市内にも古墳がたくさんあることをご存知でしょうか。よく手入れされたものから、忘れられたようにひっそりと佇(たたず)むものまで、さまざまです。
今回はそんな市内の古墳をご紹介します。改めて市内の古墳に注目してみませんか?

■高遠山(たかとおやま)古墳
形状;前方後円墳
前が四角形(方形)、後ろが円なのが特徴

◇概要
新野と更科の境界に位置する全長50メートルあまりの前方後円墳です。古墳のある尾根からは、中野扇状地から高丘丘陵までを広く見渡すことができます。地域の有力者の墓所にふさわしい、絶好のロケーションです。
発掘調査では、二つの埋葬施設がみつかりました。つまり二人の人物が葬られていたのですが、一体どのような関係だったのでしょうか。夫婦か、兄弟姉妹か、それとも相棒か。まだ解明されていません。
死者たちの傍らには、鉄剣、農工具(斧、鍬(くわ)、ヤリガンナ)、青銅の矢じり、ガラスや滑石のビーズなどが添えてありました。量は多くないのですが、盗掘された痕跡がない点が貴重です。埋葬施設周辺で見つかった土器片は、古墳時代のごく初期のもので、高遠山古墳の古さを物語ります。ひょっとすると、信州最古の前方後円墳と言われてきた森将軍塚古墳よりも古い古墳なのかもしれません。

◇POINT 年代推定の手がかり
波状の文様が描かれています。このような文様は、古墳時代の前、弥生時代の土器によくあります。まだ弥生の香りが残る、古墳時代のごく初期の土器と判断できます。

■七瀬双子塚(ななせふたごづか)古墳
形状:前方後円墳

◇概要
全長61メートルの前方後円墳です。長丘丘陵上にあり、かつては市内のどこからでも目視できたのではないでしょうか。
1921(大正10)年、七瀬青年団によって、鉄の刀剣、矛、矢じり、甲冑(かっちゅう)の破片、青銅の鏡、土器などが掘り出されています。5世紀前半(およそ1600年前)のものです。
七瀬区のみなさんが維持管理しており、一見して古墳とわかるほど、保存状態は良好です。

■金鎧山(きんがいざん)古墳
形状:円墳(えんぷん)
円墳と呼ばれる平面が円形の古墳です。

◇概要
長野電鉄延徳駅の東側の尾根上にあり、直径17メートルの円墳です。特殊な構造の古墳で、墳丘の構築材に、土だけでなく石を混ぜています。また、埋葬施設も、「合掌形石室」といって、天井部分が屋根のような形をしています。一般的な古墳と異なる特徴があるため、渡来系(朝鮮半島系)の人々との関わりも推測できます。
1925(大正14)年に発掘され、青銅の鏡、鉄の武器、馬具、ガラス玉などの装身具が出土しました。

■古墳とまちづくり
◇伊那市に学ぶ古墳とまち
伊那市の東春近地域にある老松場(ろうしょうば)古墳群。7基の古墳があり、一帯は「老松場の丘・古墳公園」として地域住民に親しまれ、整備が進められています。
このうち老松場1号墳と呼ばれる古墳が、南信地方で最も古い前方後円墳です。この古墳の本格的な調査のきっかけを作ったのは、地域の歴史について学習を進めていた東春近小学校の6年生の皆さんでした。伊那市教育委員会の学芸員のサポートを受けながら、古墳の測量に挑戦しています。その結果、老松場1号墳がそれまで知られていなかった前方後円墳である可能性が強まり、古墳研究者も改めて注目することになりました。
これを受け、伊那市教育委員会と関西大学文学部考古学研究室がさらに詳しく調査したところ、南信地方で最も古い5世紀前半に造られた前方後円墳であることが判明したのです。
古墳も含めて、文化財は専門家だけのものではありません。大人から子どもまで地域の人々に親しまれ、大切にされている老松場古墳群は、文化財として理想的であり、目標です。

■Column 中野市と伊那市
中野市と伊那市には実は以前から、つながりがあることをご存知ですか?
中野市民の憩いの場にもなっている高梨館跡公園。その一角に植えられている桜は高遠町(現伊那市)から譲り受けたタカトオコヒガンザクラです。
市制40周年を記念して、植樹されてから30年、毎年春には紅を含んだ鮮やかな花を咲かせ、公園を訪れる人々を魅了し続けています。
また4月21日には、伊那市の白鳥市長を招き、高遠山古墳にタカトオコヒガンザクラを植樹しました。

問合せ:生涯学習課
【電話】0269-22-2111(内線424)

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