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文化なかの「公民館報」No.221 ~ふるさとの歴史

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

■中世城館のやきもの(二)
花活ける器 風雅な暮らし

小舘にある高梨氏館跡。武家の館としては格が高いはずだが、出土品の量が少ないことは、2023(令和5)年2月号の本コラムでも触れた。出土品の少なさにも、おそらく重要な意味がある。廃絶を前に略奪を受けたのではと考えているが、それはまた別の機会に。まずは、少ない出土品の中にどんなものがあるのか、見ていこう。
今回取り上げるのは、花器の一種、青磁(せいじ)の太鼓胴盤(たいこどうばん)である。破片だが、端部の強い屈曲と外面の円形突起によって、それとわかる。もとは、浅い鉢のような形で、底に三本の足が付いた器であった。室町時代のインテリア指南書『君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』に「双花瓶(そうかびん)」とあるのがこれである。草花を活けて、座敷の違棚(ちがいだな)に飾り付けた。
太鼓胴盤は、以前紹介した「酒海壺(しゅかいこ)」と同様の超高級品。出土する遺跡は、戦国大名や有力な国衆の城館跡に限られている。また、遺跡出土品の他に、世代を超えて伝えられた品もある。例えば、徳川美術館(名古屋市)の所蔵品で、もとは尾張徳川家伝来の品である。日常使いの消耗品であれば、そのように丁重に扱われることはないだろう。
高梨氏館跡で見つかったのは、そういう花器なのである。しかも、釉(うわぐすり)の色調から見て、複数個体あったようだ。館の主人の経済力はもとより、文化芸術に通じた姿や風雅な暮らしが見えてくるではないか。

柳生俊樹
生涯学習課学芸員

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