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特集 くらしを守る ~篠井川排水機場~

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

篠井川排水機場は、千曲川流域での豪雨などにより、本川(ほんせん)である千曲川の水位が上昇し、支川(しせん)の篠井川が自然流下できなくなった場合に強制排水する施設で、地域の安心・安全の確保と産業経済の発展に寄与しています。
篠井川下流部の緩いすり鉢状の平野部は延徳平と呼ばれ、もともと低湿地であり、千曲川との高低差がないことから水が流れにくい地形となっており、千曲川合流点下流の立ヶ花狭窄部(きょうさくぶ)による水位上昇も加わり、洪水のたびに千曲川からの水の逆流と内水氾濫による被害が発生していました。
こうした状況を受けて、1978(昭和53)年に篠井川排水機場が完成しました。多くの方が「見たことはあるけれどどんな施設なのかわからない」排水機場の仕組みや役割を紹介します。

■篠井川排水機場の設備
私が説明します!
道路河川課 佐藤淳也(さとうじゅんや)

○篠井川排水機場でしていること
千曲川が一定の水位まで上昇した際、篠井川排水機場へ操作員が出動し、篠井川樋門と吐出水門の開閉やポンプの運転などの操作を2階にある「中央操作室」で行っています。
中央操作室には、周辺を映すカメラの映像などの河川の状況が確認できる装置があり、千曲川の水位(外水位)および篠井川の水位(内水位)の状況を確認し、操作しています。

○篠井川排水機場内
(5)電源設備
篠井川排水機場の稼働に必要な電力は、災害などによる停電時でもその機能を維持するため、自家発電設備により供給されます。
また、この自家発電設備は排水機場の防災施設としての確実性を確保するため、常用と予備の計2台の発電機が設置されています。

(6)主ポンプ駆動設備
ポンプを駆動させるための設備で、ポンプの上部に設置されています。
常に稼働する揚水機場とは異なり、排水機場は稼働時間が少なく、災害などによる停電の影響などを考慮し、1号および2号ポンプ駆動設備はディーゼル機関であり、2000(平成12)年に増設された3号ポンプ駆動設備はコンパクトで環境面にも配慮した、ガスタービンを使用しています。

(7)主ポンプ設備
篠井川樋門を閉じた際、せき止められた篠井川の水を千曲川へ排水するためのポンプです。
このポンプは各主ポンプ駆動設備の下に設置されており、水を取り込む吸水口はさらに地下にあります。
現在、ポンプは3台設置され、吐出量は1号および2号ポンプが5立方メートル/s、3号ポンプが10立方メートル/sとなっています。これらを内水位の高さや上昇速度によって、稼働台数を変更しながら運転しています。

■排水機場のしくみ
(1)平常時は、千曲川の水位が低く、篠井川から自然流下しています。
(2)大雨などにより千曲川の水位が篠井川よりも高くなると、逆流防止のため、篠井川樋門を閉めます。
(3)篠井川樋門を閉じたままだと篠井川流域が浸水してしまうため、ポンプを運転し、吐出水門から千曲川へ排水します。
(4)千曲川の水位が篠井川より低くなったら、ポンプを停止し、篠井川樋門を開け、自然流下させます。

■篠井川流域と排水機場の歴史
○篠井川流域
篠井川は、志賀高原の西方小池峠(標高1098メートル)に水源を有し、千曲川に流入する延長約10キロメートル、流域面積約49・3平方キロメートルで流域の大部分が中野市に属する一級河川です。
また、流域の約7割を平野部が占め、篠井川の支川である江部川および真引川の合流点を中心に緩いすり鉢状の地形となっており、標高の低い低地部は農地、すり鉢状の縁に村落が形成されています。

○篠井川治水の歴史
篠井川の治水事業の歴史は古く、豊臣・徳川時代に諸藩の領主が河道の付け替えや築堤を行ったものの、一貫した治水対策が確立しないまま、地域住民は水害に悩まされていました。
明治に入っても水害は続き、1892(明治25)年には地域から長野県議会に千曲川への築堤を提案しましたが、千曲川流域内の意見が一致せず、否決されてしまいました。
1910(明治43)年、延徳平住民が「延徳沖治水会」を立ち上げ、引き続き国や県に対し現状を訴えましたが、治水事業は進まず、自治的対応として千曲川との合流部にアカシアの木を約1万2千本植え、水防林を設けました。効果は顕著でしたが、対岸や千曲川上流の被害が増大するとして県から撤去勧告を受けました。
しかし、これを機に1913(大正2)年に小県郡(ちいさがたぐん)(現上田市ほか)から下流に位置する市町村により「千曲川治水会」が結成され、国や県に対し抜本的な治水事業の必要性を強く訴え続けました。
その結果、1918(大正7)年から1941(昭和16)年にかけて国の直轄工事が実施されることとなりました。

○篠井川排水機場の完成
1932(昭和7)年、千曲川からの逆流防止のため国により篠井川樋門が設置されましたが、篠井川の内水被害は依然として軽減できず、大きな被害が繰り返されていました。
そこで、1966(昭和41)年から排水機場設置の調査が実施され、度重なる調査と検討のうえ、国(現北陸地方整備局)が初めて施工する排水機場として1973(昭和48)年に着工され、5年後の1978(昭和53)年に篠井川排水機場が完成しました。

問合せ:道路河川課
【電話】0269-22-2111(内線305)

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