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文化なかの「公民館報」No.229 ~ふるさとの歴史

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

■不都合な、余りに不都合な
小舘の高梨氏館跡で出土した陶器片。水や酒などを貯(たくわ)える大甕(おおがめ)の口縁の破片である。褐色の器肌や硬く焼きしまった質感。福井県北西部、丹生郡(にゅうぐん)越前町一帯で焼かれた越前焼で間違いない。越前焼は、鎌倉時代以降、壺、甕、すり鉢などの日常雑器が日本海沿岸を中心に広く流通した。同じ北陸の珠洲焼(すずやき)に比べると影が薄いが、北信地方にも入っている。高梨氏館跡で出土した本例は、形態的な特徴から見て、16世紀後半のものであろう。
えっ、16世紀後半だと!?
以前にも紹介したように、高梨氏館跡では、白磁、青磁、青花(せいか)といった中国の磁器が出土している。古いものでは14世紀末、新しいものでは15世紀末から16世紀初めの特徴を示す。また、珠洲焼も出土しているが、これらも16世紀初めより新しくならないだろう。珠洲焼は、15世紀末までに衰退し、流通が途絶えるからである。したがって、小舘の館は、早ければ15世紀末、遅くとも16世紀前半までに廃絶した、というのが私の主張である。16世紀後半のものがあれば、それが成り立たないではないか。
不都合な資料だが、少量だし、いっそ見なかったことにしたいぐらいである。小さな破片もあなどれないと言い続けてきた口で、それはいけない。反省。改めて検討したい。

柳生俊樹
生涯学習課学芸員

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