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文化なかの「公民館報」No.234 ~ふるさとの歴史

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長野県中野市 クリエイティブ・コモンズ

■銃弾の考古学はおもしろい
白く粉を吹いた球体。ずっしりと重い。鉛の銃弾である。草間の茶臼峯砦跡(戦国時代)で発掘されたもの。破片を含め全部で7点ある。土塁や旗塚の中で出土したというから、砦に撃ち込まれたものだろう。
銃弾の考古学には、おもしろい成果がある。例えば弾の素材。西国では、遠くはヨーロッパから輸入した鉛を使っている。国産鉛の不足を輸入品で補っていたのだ。一方で東国、北条氏の城で出土するのは、主に銅や鉄の弾である。輸入素材が東国まで届かなかったのか。釣鐘や銅銭を鋳つぶして素材にしたという、どこかで聞いたような話もある。
さらにおもしろいのは、沖縄の事例。首里城跡で出土した銃弾から、15世紀には実戦で鉄砲を使っていたことが判明したのだ。本土で鉄砲が普及するのが16世紀後半だから、100年も早い。鉄砲伝来の年代観が本当に変わるかもしれない。
茶臼峯砦の銃弾も、詳しい研究はこれからだが、ふるさとの歴史を跡付ける資料になるだろう。
裏話。この銃弾、最近まで何の説明もなく高梨氏館跡出土品の保管箱に入っていた。これには驚いた。この館は遅くとも16世紀前半には廃墟になっていたはず。銃弾があるって、どういうこと!?
しかし、調べてみると茶臼峯砦のものと判明。とりあえずホッとした。一方で、少し残念な気もする。

柳生俊樹
生涯学習課学芸員

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