■伊那谷とつながるレストラン
レストラン2階の窓から見えるイチョウは、季節ごとに色を変えて訪れた私たちの目を楽しませてくれます。ちょうどその日は、秋の日がうららかに晴れて、イチョウの葉は色づくには少し早いけれど、夏の瑞々しい輝きは失せ始めているようでした。
伊那市と120年の縁がある、日比谷公園内の老舗レストラン松本楼(まつもとろう)で、9月30日から2週間にわたり、初めての「伊那市フェア」が開かれました。「信州伊那~松本楼で愉しむ秋の恵み~」と題して、伊那の野菜(チビ玉ねぎ・穂高いんげん・ミックストマト・紫シェリーじゃがいも・真黒なす)や、椎茸・舞茸などのきのこ、果物はイチジク・夏イチゴ・シャインマスカット・南水・シナノドルチェ、そして日本酒・山紫ワイン・シードルや地ビールと、酪農家おもてなし牛乳にAランクの信州アルプス牛など、どれもこれも伊那市から持ち込んだ素材ばかりです。都会に農産物を通じて伊那市を知ってもらうフェアです。
伊那の食材と老舗レストランを結ぶこの取り組みは、松本楼の小坂文乃(こさかあやの)社長と料理長やシェフの伊那への訪問から始まりました。材料の調達は料理人の目で見たいと、農家を訪ね野菜を手に取り、伊那のシェフと意見交換をして、新たな料理の構想を作り上げていくというものでした。JA上伊那やイチジク・有機野菜を作っている皆さんの協力を得て、多様でフレッシュな農産物や果物を次々と調達する手はずを整えました。
10月1日の日曜日には、伊那市に所縁のある首都圏在住の皆さんが参加して、伊那の食材で創られた、精妙で美しく鼻孔をくすぐるような料理を楽しんでもらいました。伊那に進出した企業経営者・政財界・テレビマスコミ関係・俳優・ふるさと大使・同郷の会のメンバーなど多様な方々です。
伊那育ちの野菜や果物たちは、松本楼のシェフにより繊細で季節感のある料理に生まれ変わり、参加者の感嘆の声に包まれました。「野菜がとても美味しい」、「素材の良さが生きる料理だ」、「伊那に行ってみたい」、「昔、家族で農作業をしていたことを思い出した」など、嬉しい感想が聞かれました。視覚と味覚と嗅覚は記憶を呼び戻し、美味しい料理は笑顔をつくる。そんな秋の一日でした。
伊那市長 白鳥考
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