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伊那市長のたき火通信

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長野県伊那市

■越冬昆虫
朝起きて、部屋のストーブを点けてから、朝食の準備に一階へ下りて行きます。朝食をとりながら、朝刊をひと通り読んで、お茶の入ったコップを持って二階に戻ると、だいたい6時頃です。概ねこのような日課で一日がスタートします。
ある朝十分に暖まった部屋のカーテンを開けると、レースのカーテンにイトトンボがとまっています。私の部屋で越冬している「オツネントンボ」です。漢字では「越年蜻蛉」と書きます。このトンボは成虫のまま越冬して、春に産卵をするトンボで、石垣の隙間や軒下、樹皮の下、枯葉のなかなどに仮死状態でじっとしています。春を待つトンボにとって、暖かい部屋は春と冬の繰り返しが毎日続き、きっと体力を消耗しているのだろうと心配するものの、真冬の屋外に放すのも可哀想で、そのまま同居しています。
ある日曜日、テントウムシも出てきました。「ナナツホシテントウ」です。テントウムシも、私の部屋の同居人です。部屋が暖かくなると、ゆっくりゆっくり歩き出し、いつの間にかどこかに潜り込みます。カメムシの仲間もよく顔を出します。触ると不快なにおいを放つカメムシは万人に嫌われがちですが、冬のカメムシは妙に愛おしくて、軽々に外には放り出せません。ハエもいます。冬のハエは俳句歳時記の季語で「凍(い)て蝿(ばえ)」とか「寒蝿(かんばえ)」と呼ばれます。夏の時季は、とりわけ嫌われ者のハエですが、冬に会うとあの嫌悪感はなく、「頑張って生きているね」などと声をかけている自分に気づきます。
チョウの仲間にも成虫のまま冬を越す、アカタテハ・ルリタテハ・テングチョウ・キチョウなどの仲間がいます。春になるとボロボロになった翅で飛ぶ姿を見ると、「よく生き抜いたね」と、その姿を追います。
成虫のままで越冬する昆虫たち。卵や蛹(さなぎ)などの越冬態(えっとうたい)に比べ、成虫のまま越冬する昆虫は、普通に考えると死のリスクは格段に高いと思われるのに、何故でしょう。
あのヨチヨチ歩きのテントウムシはある日の朝、ぺったんこの状態で死んでいました。私が踏んでしまったのか、同居人の一人がいなくなって少し寂しい日が続きました。

伊那市長 白鳥考

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