「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるが、昨年の夏は「地球沸騰(ふっとう)化の時代が到来」と言われたように、お彼岸が過ぎてもなかなかその暑さが収まることはなかった。その異常気象の影響のためか、大雨が降り、すごい勢いで田んぼに水が流れ込むのを見た。「あんなに水が入って土手が崩れないだろうか」と心配で床に就いたが、一夜明けると水を一杯にためた静かな田んぼがそこにあった。改めて田んぼのすごさ、土手の有難さを思った。
土手といえば、田んぼの土手に規則正しく彼岸花が咲くのをたまに見る。土手をモグラなどから守ったりする先人の知恵を実践したのだろう。秋のお彼岸の頃に決まって一斉に、空に向かって真っすぐ茎を伸ばし、火花のように咲き乱れる細長く真っ赤な花弁。風や鳥によって増えることはないので、人の手によって植えられたものがほとんどだと聞いたことがある。我が家の土手の彼岸花は、亡き父が植えたものだと後に知った。
さて、昨年の「地球沸騰化」の夏、「毎年お彼岸の頃に必ず咲く彼岸花はどうなるか」と思っていたが、お彼岸の頃をピシャッと狙ったようにきれいに咲いた。
『父と会う時期を知らせる彼岸花』公民館俳句講座の一句ができた。
富県公民館長 下島一道(しもじまかずみち)
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