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伊那市長のたき火通信

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長野県伊那市

■明治の細密画を令和で使う
高遠町出身の日本画家、池上秀畝(いけがみしゅうほ)(1874~1944年)生誕150周年展が各地で開かれています。長野県立美術館、長野県伊那文化会館、東京都練馬区立美術館、信州高遠美術館、高遠町歴史博物館、伊那市創造館で珠玉の名作の数々が展示されています。
画風はジャンルを問わず、花鳥画(かちょうが)、動物画、植物画、歴史画、武者絵(むしゃえ)、山水画などが、屏風や掛け軸、大判の和紙に数多描かれています。とりわけ私が興味と好奇心をもったのが、ボタニカルアートのような細密画(さいみつが)とスケッチ帖(ちょう)です。秀畝は実に細かく丁寧に写生を繰り返して描きました。昆虫・蝶・蛾・植物・鳥・動物・魚などを精緻に表現しています。珍しい細密画としては、オオミズアオ(蛾)、ショウリョウバッタ・ナナフシ・オケラ・ルリボシカミキリ(昆虫)、ヒマラヤユキノシタ・サンショウバラ・シュウカイドウ・タイサンボク(植物)、カササギ・キレンジャク・カワガラス・サンコウチョウ(鳥)といった、なかなか一般的でない画材を取り上げているのも印象的です。これらの昆虫・植物・鳥などの細密画が、伊那市立伊那小学校に多く保管されています。
またスケッチ帖も秀逸(しゅういつ)です。希代(きだい)の才能をもつ秀畝は、常に横長のスケッチ帖を持ち歩いていました。木曽路、伊香保温泉、那須塩原温泉、伊勢神宮などの他に、中国南部の蘇州・杭州、朝鮮半島から満州、樺太などを訪れ、スケッチをしています。
美術館などでスケッチ帖を展示する際には、一ヶ所のページしか開けませんから、他のページには何が描かれているのかわかりません。今回の池上秀畝展に何度か足を運ぶなかで、細密画やスケッチ帖を一枚一枚デジタル化、データベース化して、小中学生に活用してもらえないか?池上秀畝の描いた明治時代の細密画やスケッチを、広く市民の皆さんが活用できないか?また、市内小中学校に保管されている秀畝の作品もあります。温度・湿度・紫外線・害虫などから守るためにも、最適な保管方法を考えなければなりません。美術館や創造館に通いながら、いろいろと考えています。

伊那市長 白鳥考

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