近年、人口減少や少子高齢化といった社会の変化により、全国各地で公共施設の在り方を見直す転換期を迎えています。その背景や課題などについて考えてみませんか。
◆税金で維持管理される公共施設
皆さんは「公共施設」と聞くとどんなイメージを抱くでしょうか。時に公共施設は「ハコモノ」と呼ばれることがあります。この言葉には、無駄な費用がかかっているなど、悪いイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、市民生活に密着した学校や図書館、公民館、スポーツ施設などの公共施設は単なる建物ではなく、地域の人々が集まり、学び、そして交流する大切な場所です。重要なのは、これらの公共施設が皆さんの税金によって建てられ、維持管理されているということです。
◆建物の老朽化などが課題
令和5年度末時点で本市の所有する施設数は、272施設。総面積は約28・4万平方メートルです。これは2階建て戸建て住宅に換算すると、約2300戸分に相当する広大な面積。延べ床面積を施設の用途別に見てみると、小・中学校が最も多く、全体の35%を占めています(グラフ1参照)。
人口減少や少子高齢化といった社会的な変化に加え、これらの施設を安心・安全に利用できるよう維持していくためには、多くの改修費用が必要となり、財政的な影響や財源の確保が課題となっています。
◆今ある公共施設を次世代へ
現状を維持するためには、市民生活への影響を最小限に抑えながら、財源の確保や経費の削減など、さまざまな対策を講じる必要があります。本市の施設の半数以上は築30年を越え(グラフ2参照)、老朽化が進んでいます。このため、限られた財源の中でいかに効率的なメンテナンスを行うかが課題です。
将来に向けて重要なのは、公共施設を大切に使用し、できるだけ長く有効活用していくこと。そのためには市民の皆さん一人ひとりが現状を理解し、「市民共有の財産である公共施設を次世代へ引き継いでいく」という意識を持つことが大切です。皆さんのご理解をお願いします。
■これもみんな公共施設
◇ユメックスアリーナ(総合体育館)
令和3年にオープンした市内最大級の体育館で、災害時には大規模避難所にもなる公共施設
◇古田晁記念館
筑摩書房創立者・古田晁の生家の土蔵を改修した記念館
◇塩尻短歌館
明治期の民家を移築し、塩尻ゆかりの近代歌人の作品などを展示
◇ふれあいセンター
誰もが気軽に集える、市内3カ所にある地域福祉の推進拠点
■時代に合わせ、適正規模へ―公共施設マネジメント課 課長 佐々木 高史
これまでの公共施設は、建物自体の「モノ」が重視されがちでしたが、本当に大切なのは、そこで人々が共に過ごし、学び、成長する「コト」ではないでしょうか。学校での思い出、地域での触れ合い、そして未来への学び。これらの「コト」こそが、私たちの心に深く刻まれ、豊かな暮らしを紡ぎ出す源泉です。
少子高齢化やライフスタイルの変化といった社会環境の変化に対応するため、私たちは今、公共施設の在り方を根本から見直す必要があります。単に建物を維持するのではなく、地域住民のニーズに合わせた多様な「コト」を生み出す場へと転換することが求められているからです。
例えば、老朽化した体育館を、世代を超えて人が集まるコミュニティスペースに生まれ変わらせる。複数の小規模な図書館などを統合し、新たな文化拠点をつくり出す。あるいは、行政サービスの場と地域活動の拠点を一体化し、市民参加型のまちづくりを進める。
これらのアイデアはほんの一例です。本市では、将来を担う世代に重荷を背負わせないために、どの公共施設をどう変えていくのが最適なのか。来年度から公共施設の「より良いかたち」や「より良い在り方」の検討や整理を進めていきます。
◇公共施設のミライについて、ご意見をお寄せください
【メール】shisetsu@city.shiojiri.lg.jp
問合せ:公共施設マネジメント課
【電話】0263-52-0601
<この記事についてアンケートにご協力ください。>