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家庭教育アラカルト ~地域の文化財を手がかりに~ 22

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長野県東御市

北御牧小学校 教頭 市川 厚
社会見学で子どもたちと地域を回った際、とある四脚櫓門(しきゃくやぐらもん)に気を惹かれました。かつて長大な堰の開削を行った先人の屋敷跡(市史跡八重原堰・黒沢嘉兵衛関連史跡)でした。この門自体は改築されたもので、今では住居や当時の建造物は残っていませんが、この地から見える風景や遠くの山々は江戸時代のものと同じだろうと改めて周囲を見渡すと、一種の感慨を覚えました。
また、学校近くの古寺(観音寺)には、木造の阿弥陀三尊(あみださんぞん)像(県宝)が安置されています。作は鎌倉時代に遡るとされる仏像を眺めていると、制作の経緯やその後の変遷を知りたいという気持ちになります。仏像がこの地に迎えられるまでには、さまざまな理由があったことでしょう。
私たちの身の回りには、長い歴史の中で生まれ、育まれ、守り伝えられてきた貴重なものが残っていて、これらの国民的財産を「文化財」と呼びます。その中には、国、県、市が指定、選定、登録し、保存を図っているものもあり、東御市には、全国的な知名度を持つ宿場・養蚕の町並み(国重要伝統的建造物群保存地区・海野宿)、原始時代の遺跡(国史跡戌立(いんだて)石器時代住居跡)、明治時代の学校建築(県宝旧和学校校舎)など、そうそうたる文化財があります。また、民族芸能や祭り、生活や習わし、技術、身近な石碑、博物館や文書館などにも過去の記録や記憶となるものが残っています。
それらの文化財は、私たちの暮らしや心を豊かにしてくれるものであり、私たちがどこから来てどこへ向かっていけばよいのかという視点では、生き方のヒントにもなります。家族で一緒に文化財を見て、感じて、そして自分たちの地域について話したり考えたりすることは、想像力や思考力を養うことにもつながるでしょう。子どもと一緒に文化財に触れることは、家庭教育の一環としても意義があると考えます。
私たちは混迷の社会を生きています。そのような中、長野県では、「個人と社会の〝ウェルビーイング〟の実現」を目指しています。その一つのきっかけとして、地域の宝である文化財を手がかりに、大人も子どもも一緒になって学びを深め、望む未来を実現していかれればよいですね。

※ウェルビーイング…「身体的・精神的・社会的に良い状態にあること」

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